やりたいことをやる力

子どもにとって「やりたいことがやれる(挑戦できる)」というのは大事なことです。
西荻学園幼稚園では、園庭の外遊びの時に、様々な園庭遊具の他に、ボールや三輪車、ペダルなしの自転車、手押し車、手先を使うおもちゃや工作の材料、図鑑などを準備しています。砂場のおもちゃも多くありますし、木登りに挑戦できる木も、虫探しをする藪もあります。そして、先生たちがいます。
しかし、「羊を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」というように、やりたいかやりたくないかという自分の欲求に従って「やらない」を選ぶのであればそれはそれでよいのです。しかし、本当はやりたいのにやろうとしない子がいます。欲求に勝る「ストップ原因」があって、本当は求めていることができなくなっているのです。
ストップ原因は様々にありえます。しかし大きく分けると2つです。一つは、やりたいことをやると「怒られる」、「間違える」ということへの恐れです。もう一つは、「やって」と言えばやってもらえる環境に浸ってしまって、真っ先に自分では「できない」と判断してしまう場合です。
子どもにとっては全てが遊びのカテゴリーに入ります。朝の支度も、お手伝いも、子どもにとっては遊びです。本来遊びには「もう一回!」、「できた」、「もうちょっと」があるのであって、失敗しながら成功に進んでいくものです。
しかし、大人である私たちは「ちゃんとできないといけない」、「早くできないといけない」という遊びの基準から外れたところで子どもの行動を判断してしまいます。そのために、子どもがやっている途中で「ダメじゃない」と声をかけ、子どもから取り上げて代わりにやってしまいます。叱ってしまうこともあります。結果として、子どもは失敗すら経験できないということになります。
繰り返しますが、子どもは失敗して上手になっていきます。失敗の経験を取り上げらるから、次もできないのです。やらせてもらえないと楽しくなりません。チャンスを与えなければ満たされることはないのです。自分でできれば充実感があり満足できるのに、遮られ、取り上げられることが常態化すると、自分を出せなくなり、「やりたくてもやれない」という子になってしまうことがあります。
「ダメ」と言われて行動と思考が停止し、取り上げられて自分で答えを見つけることができないのは、子どもの自尊心を脅かします。やがて言わないとやれないということが起こり、しかも成功経験がないので、出来ることを応用して発展させたり、行動を予測したりといったことも難しくなります。
確かに何度か失敗を経験させなければなりませんが、子どもがやりたくてやる行動の成長は驚くほど早いので、できたことを認めてあげて、次のステップに子どもが進んでいくことを促す方が上手にできるようになります。結果として、何度も同じことを言ったり、何でもやってあげないといけないということから大人は解放されます。そうなれば、大人にとっても子どもにとっても幸せなことだと思います。やりたいことをやる、という子ども本来の力を発揮することができます。

2019年06月05日