降園後の保育室

子どもたちが降園した後の保育室やトイレは、その日の子どもたちと教師たちの興味や関心、工夫や戸惑い、気持ちの落ち着きや苛立ち、満足したこと、やり遂げたこと、そんな沢山のことを感じ取らせてくれます。保育時間は園長が保育室内をうろうろしていると子どもたちの集中が切れてしまうことも多いため、直接保育室内に入ることはできるだけしませんが、降園後は、すべての保育室とトイレを見るようになりました。
同じことをしている方が他にもおられました。玉川大学准教授で東一の江幼稚園園長の田澤里喜先生です。先日届いた日本教育新聞に記事を寄せておられ(2019年7月1日)、こうした保育室の変化に気づくところに、保育の質向上につながる可能性があると書いておられました。
保育の質を高めるには、教材の工夫はもちろん必要です。しかし、いつ、どんなことに興味を抱き、どんな風にアプローチをするのかを想像した環境の工夫も大切です。子ども疑問や好奇心は待ったなしです。
朝、すべてのクラスの保育日案を確認します。変更があれば報告されますので、何も報告がなければ保育日案を軸に保育活動がされたことが分かります。しかし、降園後の教室に残っているのは、保育日案の成果だけではありません。
空き箱を長く長く繋げて作った力作が残っています。あまりにも長くなったので自転車で登園している子は持ち帰れなかったのです。これを作った子にとってアプローチは終わっていません。さて、どうやって持って帰るのでしょう。その工作が他の子に壊されないように置いてあります。
「今、子どもたちは記号に興味を持ってるんです」と言った教師の担任している教室の扉には、子どもの目の高さにカラーコピーした記号が掲示してありました。その成果は、危ないところ、子どもが触ってはいけないところに黄色い画用紙で作った「危険」マークをつけると子どもどうして「触っちゃだめだよ」と教え合う姿に繋がりました。子ども同士が教え合うことは、確実に子どもを成長させます。
羽アリが飛ぶ季節に羽アリを捕まえてきたので、子どもたちで考えたアリの名前の書かれた飼育箱がアリのように装飾されて置かれました。ただ飼育箱を置くのではなく、ちょっとした工夫を加えてくれることで環境が子どもたちのアプローチを迎えることができます。今年のたなばたの短冊に、「アリがいつまでも元気でいられるように」と願って書いてもらった子がいました。その子のアリへの関心と優しい心を迎える「見える環境」が準備されたからです。
ちょっとしたことでも環境として見えるようにすることで、子どもの興味や関心は育ちます。子どもが登園したときと子どもが降園した後で教室の環境が変わっていく幼稚園を嬉しく思っています。

2019年07月16日