頼る力

自分にはできないことを自覚して、「助けて」、「手伝って」と人に頼ることができるというのも、大事な生きる力です。一人でできることには限界があり、得意もあれば不得意もあるのは、子どもも大人も同じです。
幼稚園には、何でもやってもらおうと依存してしまう子もいます。それが甘えなのか、依存なのか、それとも何をすべきか理解できていないのか、子どもたちの成長の様子は様々なので一括りに「良くない」とは言えません。しかし、人に頼ることができない子は心配になります。
これからの時代は、さらに人に上手に頼ることが「力」として問われると考えています。会社で社長だけが頑張っていても、チームのリーダーだけで仕事をしても、すぐに限界がきて、つぶれてしまいます。集まった人々が自分の役割を得て、得意な力を出し合って組織は最大の力を発揮します。助け、助けられる。それが成熟した社会ではないでしょうか。
「手伝ってほしい」、「助けてほしい」と言える「力」は、自分自身を把握する力であるのと同時に、他者を尊敬尊重する力でもあります。他者を貶めることは、動物でもできます。しかし、他者の才能を認め、尊敬し、尊重するところまで想いを高めることができるのが人間です。もちろん、人にものを頼めるのは自分のすべきことを精一杯やっているからです。何もせずに頼るのは驕った依存です。これは子どもであっても戒めなければならないことです。
子どもは向上心が豊かです。自分の能力を最大限に発揮することに喜びを感じます。そんな子どもたちに「~が得意なんだね」、「~はお任せしていいかな?」、「お願いするね」というように、持っているものを認め合えるような言葉をかけることで、子どもの自尊心は育ちます。それと共に、「何か手伝えることはある?」と聞く言葉も大事です。それを通して「ここを手伝ってほしい」と伝えられるようになります。自分自身への理解と、他者を信頼できる存在として受け止めることの両方で、頼る力が育ちます。

2019年07月30日