互いに相手を優れた者と思いなさい

子どもにとって最もいい学びのスタートは、自分で「やる気」になった時です。「やる気」になって始めたことを「やり遂げる」ことが一番の学びのタイミングです。ですから、子どもの「やる気」に気がつく「観察」と、「やり遂げる」ための「見守り」が大人の側の課題になります。
幼稚園に入園するということは、集団の一員としての新しい経験に挑戦する機会です。多様で複雑な場面で、ことばと行動を通しての意思表示や、イエスとノーを区別すること、一人の課題や、一緒なって担い合う課題への取り組みなど、高度で複雑な思考と判断力を身につける必要があります。これらは、子ども自身が経験を重ねることでしか身に着きません。
そこで、大人は子どもが「やりたい」という意思表示をした時に、言い出したことを存分にやらせる度量が試されます。うまくいくときも、うまくいかないときもあるでしょう。時間がかかったり、壊したり、汚すといった、大人にとって都合の悪いことも出てきます。その時こそ見守るべき時なのです。
子どもが自分で「やる」と決めたことは、どんなに時間がかかってもやり遂げることを大事にすべきです。「やる気」が「やり遂げた」に向かった経験こそが、子どもに自分自身への信頼を育てます。これが心の力となります。心の力に支えられて思考は育ち、意思は明確になります。ですから、子どもが取り組んでいることを、先取りしてやってしまったり、せきたててしまったり、中断してしまったり、肩代わりをしてしまうということは、子どもにとって不愉快で、不満を感じさせてしまいます。やる気が削がれてしまいます。
ただし、見守りは放置とは違います。見守りは、適度に見本を示し、助言をするかかわりを保ちます。「やる気」を不安から守るのが「見守り」です。そうやって子どもの成長に立ち会うと、子どもの力に驚くと共に、やり遂げる姿に尊敬を感じることもあります。
聖書に、「尊敬をもって互いに相手を優れた者と思いなさい」(聖書 ローマの信徒への手紙12章10節)という言葉があります。これは大人同士だけでなく、子どもを見守り、一緒の時を生きるところで大切にしたい心構えです。

2020年01月10日