比較するなら過去と今

幼児期の子どもは、年齢だけでなく月齢でも随分成長程度が異なります。4月生まれの子どもと3月生まれの子どもでは、大変な差を感じることでしょう。また、兄姉がいるのか。お父さん、お母さんと過ごせる時間。祖父・祖母や叔父・叔母の関りがあるかないか。些細な環境の違いで、得意不得意や興味関心や成長の違いができます。ですから幼稚園では、他の子と比較をすることに意味がありません。
しかし、人間というのは比較して状況を把握しようとする能力が秀でています。ですから、どうしても気持ちが比べてしまうことに向かってしまうのは仕方のないことです。それならば、比較の対象を変えればよいのではないでしょうか。
私は、比較するなら「昨日の子」と「今日の子」の姿を比べるということを土台にするのがいいと思っています。子どもと毎日一緒に過ごしていると、かえって昨日と今日の成長には鈍感になりがちです。その分意識して見ることを心がけると子どもを観察する目が養われます。毎日でなくても、先月と今月、春と夏、去年の誕生日と今年の誕生日でどれだけ成長しているかを比較してみるとよいでしょう。過去と今を比較するのです。そうすると、子どもの頑張ってきたことや、興味の移り変わりや、葛藤や、友だち関係の発達や、得意なこと、今は苦手に思っていること等、色々なことに気がつきます。
他の子と比較してわかるのは「できる・できない」だけです。しかし過去と今を比較すれば、明日のための「課題」が見えます。子どもが頑張る課題と共に、子どものサポーターである親の課題も見えてきます。昨日のどんな自分の態度や言葉に子どもが勇気を得たのか、喜んだのか、嫌だったのか、悲しかったのか。そんなことにも思いが向くようになるでしょう。子どもが人を親へと育ててくれます。それが子どもの「仕事」なのかもしれません。
ですから、他の親と自分を比べることも意味がありません。人間は神様ではないのです。必ず出来ないことがあります。どんなに子どもに要求されても応えてあげられないことがあります。みんな違うのは当然です。親としての自分を考える時にも、昨日の自分と今日の自分を比べる程度で十分です。過去と今を比べてみると、親の方も大した親として育っているのです。

2020年01月23日