ちゃんとしなさい

「ちゃんとしなさい」という言葉を子どもはいったい何回聞いていることでしょう。その時、「ちゃんとする」ということは、具体的にどんなイメージになるでしょうか。
言われたことに文句を言わずに対応する子でしょうか。ダメと言われたらすぐに止めることができる子でしょうか。ふざけないで真剣に話を聞く子どもでしょうか。叱っている側の悲しみや苛立ちを理解できる子どもでしょうか。
大人の発する「ちゃんとしなさい」のうち、半数以上は実は具体的イメージを持っていないのではないかと思います。具体的イメージがないままに、「自分を困らせないで」というメッセージを発しているのではないでしょうか。つまり、具体的どうすべきかは、子どもが判断しなければなりません。
「ちゃんとする」の「ちゃん」とは、語源としての意味は「すぐに」とか「早く」といった意味になるそうです。つまり、「ちゃんとしなさい」というのは、「さっさとやりなさい」ということです。
これは幼い子どもにはなかなか難しい要求です。なぜなら、幼児期の子は極端な転換が得意ではありません。いわゆる「切り替えが苦手」なのです。また叱られた時などの緊張感も苦手です。「空気を読む」ことにまだまだ長けていないからです。
ですから、大人が真剣であればあるほど、場の空気を読まずにふざけます。叱られているのに笑います。そんな時に周りが笑ってくれたら、調子に乗ってしまいます。どんどんエスカレートします。彼らにしてみると、分かりやすい期待に応えているだけです。
「ちゃんとしなさい」と言われて、期待されている「ちゃんとしている」イメージ通りに応えるためには、「ちゃんとしなさい」と要求する大人よりも、広い心と深い洞察と強い自制を持っていなければならないのです。
あいまいな「ちゃんとしなさい」に応える幼児を見たなら、おそらく私は感心するよりも心配してしまうことでしょう。それは既に子どもの生き方とは思えないからです。

2020年02月12日