振り返り 新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症の感染防止のために西荻学園幼稚園も休園としました。唐突な首相の小・中・高校および特別養護学校への休校要請の報道を受けて、各幼稚園の園長も対応を迫られました。首相の休校要請の夜、私のところに幾人かの園長先生からお電話がありました。「先生のところはどうしますか?」というお電話でした。すでに教職員と保護者会の幹事長に休園その他の基本方針をメールしていましたので、「休園にします」とお答えしました。その段階で考えていたことを記してみようと思います。
お分かりのように、幼稚園の室内保育環境は「濃厚接触」環境です。濃厚接触の危険は小・中・高校よりも高い環境です。そして濃厚接触の環境が保育環境の基本となっています。子どもたちと顔を合わせず、話しかけず、触れることなく保育を行うということは無理です。首相の言うように「これ以上の感染拡大を防ぐ」という点から言えば、真っ先に救援すべき環境です。しかしながら、文科省は「幼稚園は要請対象外」と回答し、「保育所は開所するように」という指示が回りました。こども園にも自治体から開所要請があったと聞いています。
前例のない事態でしたが、こうした場合の私の思考の道筋ははっきりしていて、「第一目的を達成するための最短のストーリーを構築する」ことです。

① 新型コロナウイルス感染症への対応の第一目的は「感染拡大防止」。
② 感染拡大防止によって守られるべき対象は、第1位が園児、第2位が教職員、第3位は保護者、第4位に園児及び教職員の家族、第5位に幼稚園近隣にお住いの方々。第3位以降は第1位、第2位を守ることで同時に感染拡大防止を図ることができる。
③ 感染を防ぐためには「濃厚接触」の機会を可能な限り減らすことです。

新型コロナウイルス感染症についての情報は決してクリアなものではありませんでしたが、この段階で西荻学園幼稚園をあずかるものとして注目していた情報がありました。
① 新型コロナウイルス感染症は、自覚する「風邪のような症状」が出る2日前から弱いが感染の可能性があること。
② 子どもが感染しても気がつかないかもしれないこと。
③ ご高齢の方、持病をお持ちの方が感染されると重篤な状態になる可能性が高くなる。最悪の場合死亡のリスクがあること。
④ 感染の可能性の観察に「2週間」という目安が示されていること。
⑤ 一度感染された後、回復され「陰性」が認められながら短期間で再度の感染が確認された人が複数出たこと。

対応すべき幼稚園の状況を確認すると、
① 幼稚園には高齢の方と同居なさってる家庭もあり、同居なさらずとも普段から親しく行き来しているご家庭もある。
② 預かりを希望している家庭があった。但し就労を理由に希望されている家庭は少数で、その他も小学校の関係での預かり希望であった。
③ マスク、消毒のアルコール等はまだあるが、今後の補充の目処はない。
④ 現在対応している以上の感染防止対策の準備はできない。
⑤ すでに自主的にお休みしている家庭がある。
最大の悩みは、卒園を控えた園児とそのために一所懸命にご準備をしてくださっていた保護者の方々のことでした。子どもたちの気持ちを思うと、卒園遠足、お別れ会というイベントが中止となります。保護者の方々も謝恩会をはじめ毎日のように集まって準備してくださっていました。しかし、命には代えられません。また、感染後の後遺症については不明です。全てが収束して「あんなに大げさにしなくてもよかったではないか」と非難されるならば、その方が良いでしょう。皆が無事にこの危機を乗り越えてこそ、非難も言えるのです。卒園式は規模を大幅に縮小して行うこととました。教職員はラッシュ時間をさけて出退勤時間変更を指示しました。
以上のことから、2月27日夜に休園をはじめ、基本的な対応を教職員に伝え、謝恩会の中止を幹事長に要請しました。翌28日朝に教職員の会議を開催して基本的な対応を正式に通達し、28日に各教室を園長が訪れて子どもたちにお休みとなることを伝えることにしました。事実上の終業式でした。教師たちはすぐに持ち帰りの荷物を整えてくれました。謝恩会をご準備くださった保護者には直接説明する機会を持てました。現在は、縮小する卒園式の準備を進めています。
保護者の皆さまは、突然の休園通達にも関わらず、積極的にご協力をくださり、幼稚園の対応で欠けたところを互いに補ってくださいました。西荻学園幼稚園は保護者の方々に恵まれていると深く感じました。心から感謝します。
28日午後に地区の幼稚園連合会事務局から対応についてのお問い合わせをいただきました。夕方に区役所から「参考」ということで杉並区内の小・中・高校の休校についての情報提供をいただきました。さらに、近隣の同じ教会に属するキリスト教系の幼稚園・保育園連絡会と情報交換をすることができました。情報収集と交換は現在も続いています。
ともかく、一日も早く収束の道筋を得て、新年度は元気な子どもたちを迎えられるように祈っています。

2020年03月03日