愛着の形成

私たちは不安な時、誰かに頼り安心感を得たいと感じます。多くの子どもは親に抱っこしてもらうことで安心感を得ます。そういった他者との情緒的な結びつきを愛着関係(アタッチメント)と呼びます。愛着関係を乳幼児期に形成することは極めて重要なこととされています。愛着関係が形成されると、子どもにとって親は安全基地のようなものになると言われます。安全基地があれば、そこから出発して周りの世界に探検に出ていけます、何か怖いことがあっても、基地に戻れば安全と安心を得られ、子どもは元気を満たして次の探検に出発することができます。
愛着関係は実験から、本質は栄養補給ではないことが分かっています。抱っこのような身体的接触による温もりは重要です。しかしそれだけではありません。乳幼児期の子どもの愛着関係の形成に重要な要因は、乳幼児期の子どもが発する様々なサインが鍵となります。言葉を発する前の子でも、泣いたり、笑ったり、見つめたりという様々なサインを発しています。それらがどのくらい意図的かどうかは分かりません。反射的なものも多くあるでしょう。しかし重要なのは、サインを受け止める大人がいるという事実です。そして、サインを受け止めた大人がどのような行動をするかということです。
健全な関係であれば、子どもが泣いていたら、大人は子どもを無視するでしょうか。おむつか、ミルクか、それとも他のものが必要なのか、不愉快な何かを取り除くべきなのか、考えて応えようとするでしょう。「どうしたの?」と語りかけて抱っこするかもしれません。子どもが笑っていたら、子どもが笑顔というサインを意識的に出しているかどうかではなく、子どもの笑顔に魅かれて、自然と大人も笑顔になります。語りかけることもあるでしょう。
このように子どもがサインを出し、親はそのサインに対して反応を返します。親の反応に対して子どもが更に反応を返すことで、「やりとり」が積まれていき、関係が形成されていきます。そのような経過を赤ちゃんの時、幼児の時の成長に応じて重ねていくことで、強力な愛着関係が形成されていきます。
赤ちゃんは生後3か月から半年くらいまでは、どのような他者とも愛着関係を形成する可能性があるそうです。両親以外の相手にも、サインを向けます。そうやって自分の世話をしてくれるのが誰なのかを見極めているそうです。自分と過ごす時間が一番長いのは誰か。質の高い世話をしてくれるのは誰か、ということを見極めつつ、青着関係を形成する相手を決定していきます。3か月から半年は誰にでもサインを見せるものの、その後は特定の人に愛着を見せるようになります。その後、人見知りがでて見知らぬ人に対して警戒を見せる一方で、愛着関係を形成する人との関係をさらに求めるようになります。姿が見えなくなると泣いたり、後追いをするようになります。そうやって強い愛着関係を形成し安全基地を作った子は、短時間であれば離れても過ごすことができるようになり、仕草や表情は豊かになり、言葉を発し、お互いが協調してさらに愛着関係を深く強くすることができるようになります。(参考・「おさなごころを科学する」森口佑介著 新曜社)

2020年03月18日