ごめんなさいが言えない子

友だちともめ事があったときに、叩いてしまうことが起こります。そして、そうした子どもは叩いてしまった後に謝ることができないで、目をそらしたり、下を向いたまま黙っていたりすることがあります。どうしても「ごめんなさい」が言えないのです、。
友だちとのもめ事で、衝動的に叩いてしまうこともありますが、自分の気持ちを適切に表現できない状態によって叩くという行動になってしまうことがあります。自分の気持ちを適切に表現する手段がなかったり、表現するために感情をコントロールすることが未熟であったりして、結果として不平や不満がある時や、何か要求が生じると、言葉以外の表現をすることになります。例えば、一つのおもちゃの取り合いになった時に、適切な言葉で自分の気持ちを表現して交渉することができないために、奪い取ってしまうことになります。
また、気持ちを伝える言葉や手段があっても、人との付き合い方で緊張してしまい、結果として自分の思いを表現できなかったり、固まってしまうこともあります。
こうした子には、まず日頃から自分の気持ちを表現しても大丈夫という関係を作ることが大切です。失敗やトラブルを起こしたときに素直に「ごめんなさい」と言っても大丈夫という思いが持てないと、謝ることはできません。謝っても大丈夫という思いが持てないと、トラブルを起こした事実を認めず、場合によっては嘘をついたり黙り込んだりします。
失敗やトラブルに対して「あなたの存在が悪い」という理解を与えないように気を付けなくてはいけません。こうなると、ごめんなさいを言うことは、自分という存在が悪いということを認めることになってしまいます。
また、トラブルがあった時に、「ごめんなさい」と言わせることを優先すると、謝ることで事を済ませてしまおうという態度につながります。「とりあえず謝っとけ」というわけです。トラブルに対して謝ることができるのは、正しい状況の認識の下で「自分の方が悪かった」と意識し、「ごめんなさい」を言う必要性を理解して、ようやく素直に謝ることができるのです。ですから、事実の確認や本人の思いの確認にこそ助けが必要なのです。
トラブルを起こした直後は、興奮していたり、緊張していたりして、感情が乱れているときです。私たちはよくそうした場面で「どうしたの」という質問をしてしまいますが、それに応答するのは子どもには難しい場面であることが多いのです。「どうした」とか「どんな」というような方向性のない質問は曖昧過ぎるのです。
そこで、感情を整える上でも、子どもが状況を認識する上でも、自分の気持ちを表現できるように質問に方向性を持たせる工夫をしてみましょう。実際、多くの場面では大人は状況を察することができます。他の子どもたちが起こったことを教えてくれることもあります。そこで、「〇〇されたのが嫌だったの?」、「このおもちゃが使いたいのね?」と、本人の認識を代弁してみます。日頃から自分の気持ちを表現しても大丈夫という関係性があれば、うなずいたりして、自分を表現できます。うなずくことで、本人が気持ちや認識を表現したということが大事です。
感情についての理解がある子であれば、「今の気持ちは、悔しいかな?悲しいかな?」と、選択肢を与えて本人に選んでもらうのも、気持ちを表現する初歩をうながす方法となります。繰り返しますが、本人が気持ちや認識を表現するということが大事です。それが、やがて自分から正しく、素直に「ごめんなさい」と謝る自律へとつながっていくのです。

2020年08月28日