失敗からしか学べない事

子どもが失敗したときに、極力避けたい対応は、「○○ちゃんには、難しかったね」と、子どもから取り組みそのものを取り上げてしまうことです。

大人の様々な事情があるのでしょうが、要するに子どもが失敗することに耐えられないのです。時間がないのかもしれませんし、これ以上失敗されると何らかの損失があると考えたのかもしれません。子どもが傷つくのではないかと心配したのかもしれません。しかし、子どもか出来ないことを「マイナス」と判断して取り上げてしまったことには違いありません。

時間がない時には、前もって「○○時にはお出かけするから、△△分になったらおしまいにしようね」と伝えておいたり、「折り紙はあと一枚しかないから、今日はそれで最後にしようね」と伝えておくことで、失敗をマイナスとしないで、改めて次の挑戦の機会を得られます。前もって、「次」へとつなげる準備をするのです。

問題は、子どもの失敗を直視することができない状態の時です。「これ以上失敗したら、子どもがかわいそうだ」と思って取り上げているのでしょうが、この場合守られているのは、子どもではなくて、子どもの失敗から目を背けたい大人の方です。子どもは、信頼する大人をがっかりさせてしまったことを感じ取って、失敗は悪いことだと覚えます。これは望ましいことではありません。

失敗は決して悪いことではありません。人間は、失敗するところから学びを得るからです。

「失敗は成功のもと」と言われるように、実際に世の中にあるもので、失敗を経験しなかった成功はありません。できない、うまくいかない、その経験から、次のやり方を考えてきたから成功があるのです。成熟があるのです。発展があるのです。進歩があるのです。

失敗の経験が、次のやり方を考えるチャンスです。それを子どもから取り上げて失敗させないようにすると、次にどうすればいいのかという観察、推察、推測、類推、計画といった分析知能を育てる機会を奪います。いわゆる「考える力」が養われないのです。さらに、何度も試してみる忍耐力や集中力も養われません。失敗して落ち込んだ気持ちをどう整えるのかという訓練も失われます。

こういった失敗しないとでいない訓練や養いがないと、小鳥のひなが口を開けて親鳥が運ぶ食べ物を待つように、口ばかりやかましく他人が成功を施してくれるのを待つばかりとなります。当然ですが、世の中はそのように都合よく成功を譲ったり、施してくれることはありません。不平と不満で心が満たされていきます。

失敗を経験することのもう一つのメリットは、「今の自分にはできないが、できる人がいる」ということは気づくということです。他の人の優れた点に、良いところに気がつくというのは、生きるために重要な力です。素直に「おとうさん、すごい」「おかあさん、すごい」「お兄ちゃん、すごい」「お姉ちゃん、すごい」「○○ちゃん、すごい」と感じられるのは、子どもにとって大切なことです。

他者への敬意を持っている人は、周囲も気持ちよく助けたいと思います。他者への敬意を豊かに持った人は、魅力的なのです。これは大事な生きる力です。

失敗は決して損なことではありません。失敗から立ち直る経験を積み、困難を乗り越えるしなやかで強い心、他者への敬意を持った魅力的な人格を育てたいのです。

2020年09月08日