情報を吟味する

インターネット上には、様々な子育てについての情報が発信されています。誰もが同じ情報を受け取れる便利な社会になった反面、情報の真偽について吟味する力を身に着けないと、情報に踊らされることになります。

ここでは、特に子育てに関する情報について吟味することを考えてみます。

まず、知っていただきたのは、世の中に出ている情報は「上手くいった人の結果論」でしかないということです。上手くいったという結果を前提にして、他と何が違ったのかを問うて方法論としています。

その際に、私たちが気を付けたいのは、特定の人は上手くいったが、その陰に脱落したり淘汰された存在がいるということです。例えば、大変なスパルタ指導に耐え抜いたスポーツ選手が抜群の成績を残した時、この成功を前提にして、「ご両親は子ども時代に~を与えていた」とか、「学生時代にスパルタ指導を受けていた」、だから「今の成功がある」。このような循環型の論理が展開されます。でも、その裏にはスパルタ指導に耐えきれなかった数多くの故障者がいる、ということもあるのです。

特定の方法論を評価する時に、私たちには「生存バイアス」という偏りが生じます。淘汰された失敗事例を見ないで、成功(生存)している一部のみを見て、判断してしまうことです。ダイエットやサプリメントの広告なども、こういった私たちの傾向を巧みに利用しています。

ある子育て論が、全ての子どもに効果を発揮するわけではありません。そこで、子育てについて読んだら、「この人は、こういうやり方で育て方をしているんだな」、「この人の家庭だから、こういう結果になったのだな」という、ちょっと引いた受け取り方をしてみるといいと思います。

その上で、心惹かれる考え方や、共感できるところがあったり、自分と環境が似ているなと感じられたなら、そういうところを取り入れれば良いのだろうと思います。

だから、「これが正解」とは思わず、「人は人、私は私」という心で、一歩引いて、「よそよそしく」受け止めてみてください。それでも、気になることや、「我が家(自分)も同じだな」という情報を受け取ればよいのです。

一番危険なのは経歴を見て、「○○先生が言っているから」と、あなたのお子さんを知らない「権威のある専門家」に委ねてしまうことです。あなたのお子さんについて、あなた以上に知っている人はいないのです。あなたこそ愛する我が子の専門家なのです。自信をもって情報を捨ててしまってください。それでも残るものが、吟味された本当に必要としている情報なのです。

2020年09月10日