好奇心のために

好奇心は活動と思考の源です。ワクワクした気持ちは、人に意欲を与えます。

OECDによる成人を対象とした調査(2012年)では、20歳の日本人の好奇心は65歳のスウェーデン人並だったそうです。(参照『OECD「国際成人力調査」の概要と日本の成人力 』坂口緑(明治学院大学) http://www.j-lifelong.org/wp-content/uploads/2015/06/36-10-1.pdf )

現代は、2012年と比較して、さらに様々な情報に容易に手に入れられる時代になりました。しかし、手軽さが逆に好奇心を妨げているとも言えます。知らないことを知ろうとする意欲や、もっと深く知りたいという気持ちが弱まっています。

子どもたちは、本来好奇心そのものの様な存在です。新しいことを知り、挑戦することに意欲的で、知らないことを知った喜びから、学ぶことは楽しいと思えるようになります。本来的にワクワクしないところに高く、深く、広い学びはないのです。子どもたちの好奇心を維持し、さらに好奇心を育てるために、どうしたら良いでしょうか。

子どもたちのワクワクを維持し、好奇心の満たされる感動を体験させるには、「すぐに教えない」ことです。知りたいことはインターネットで検索すればすぐに分かります。関連するリンクを次々とクリックすると、どんどん情報は拡がっていきます。そうすると、子どもの疑問に答えを与えることが出来て、大人は満足するかもしれません。しかし、そこで子どもの好奇心は枯れていきます。

ワクワクした好奇心は、もやもやとした「知りたい」、「やってみたい」という欲求と結びついています。そのような好奇心が本当に満たされるのは、「自分で得た」時です。与えられた時ではありません。ですから、答えを与えるのではなく、好奇心を自分で満たすように導くことがいちばん大事なのです。

そのためには、あえて時間をかけて、「自分の手と足」で確かめさせるのです。図鑑を持ってきて「与える」のではありません。「○○の図鑑があるから持っておいで」と、子ども自身に持ってこさせるのです。索引からさっさと目的のページを開いてあげるのではなく、調べ方を教え、子ども自身にページをめくらせます。読めない字は読んであげても良いですが、どこを読むのかは子ども自身に聞きます。とにかく、「自分で調べた」、「自分で得た」という体験をサポートします。子どもが調べたり、色々試す様子は、大人から見るともどかしく思えるものです。しかし、そのもどかしい時間が、好奇心を育てるために必要なのです。

そして、調べたり試したりする子どもの好奇心の対象に、サポートする大人も興味を持つようにできるとよいです。子どもが調べて教えてくれたことに、大人もワクワクした関心を示します。子どもが調べたことを「教えて」とお願いして、話してもらいます。人に教えることで知識は定着し、新しい疑問という好奇心が生まれたり、さらに深く知りたいという意欲がわきます。

一方で、子どもは驚くほど早く好奇心を手放してしまうことがあります。好奇心をすぐに与えられたもので満たしてきた子は、もやもやとした調べる時間や試す時間が嫌いです。与えられないと好奇心そのものを放棄します。

しかし、そのような子でも、何かに夢中になることがあります。テレビのヒーローやポケモンのようなものでもいいのです。そこでとことん夢中になって、好奇心を刺激されていきます。自分で調べるようになります。ヒーロー物やポケモンなどには、元ネタというべきものがあります。生き物だったり、宇宙だったり、そういったことへ興味をつなげていくことができます。

2020年09月23日