落書き・落描き

子どもは落書き(落描き)が好きです。隙あらば、何にでも落書きをします。小学生になって、教科書に落書きをした経験がある方もおられると思います。壁やテーブルに油性マジックで落書きをして叱られた経験のある方もおられるでしょうか。

落書きはいたずらというイメージがありますが、最近では、落書きは脳をリラックスさせ、想像力を発揮させる方法の一つであると言われるようになりました。

しばらく前に、イベントなどのデザイナーとして活躍される方の打ち合わせ会議の様子を知りました。その方は、席に着くと何でもいいのでメモを取る紙を用意されます。無ければ裏紙でもいいからと要求します。そして会議の間、ずっとメモを取っていますが、会議が終わるとメモをそのまま置いて行ってしまうのです。つまり、メモは備忘録としてではなく、会議の間、アイデアを出し、深めるためのものだったのです。残されたメモは「落書き」としか言いようのないものだったそうです。

落書きのような、集中していない時間をとることで、むしろ時間は効率的に用いられるとも言われます。落書きをして、脳をリラックスさせ、その後ふたたび集中することで創造力や思考力が高まり、結果として短時間で課題を終わらせるからです。

子どもに自由に落書きをさせようとすると、大がかりなことを言えば、壁一面を黒板やホワイトボードにしてしまうという手があります。最近は手軽にできる壁紙が売っています。写真は幼稚園の黒板に子どもがした落描きです。「顔が漢字の人」だそうです。

落書きの中で覚えたての「字」を書いたりします。何人かが一緒に落書きをして互いに字を教え合う姿もあります。一緒に黒板に書きながら、あるいは描きながら、会話のような、独り言のような、不思議なやり取りの中で物語を創造し、空想を膨らませています。

このように、「書く」とか「描く」ということで、リラックスし、無意識のうちに集中した状態を招き、意識しない自分の可能性を呼び覚ますことがあるのです。こういう時間は子どもにとって大事な時間です。

もちろん、紙を用意して上げることでもよいのです。ただ、幼児期の子どもでよくあるこだわりは、「真っ白い」紙でないとダメということがあります。両面共に使用していない新品の紙でないと落書きができないという子は、たくさんいます。端っこにちょこっと描いただけで、残りのスペースに描くことをしないのです。それが、親へのプレゼントになれば良い方で、そのままゴミ箱行きということが殆どです。

もったいないと大人は感じるのですが、そこで「もったいないじゃない」と言うと子どもの気持ちが萎えてしまいます。ここは、効率化を計っては逆効果です。もったいないとか、そんなことを意識せずに、無意識にやる時間が大事なのです。せめてそんな時は、「これ私がもらってもいい?」と聞いて、捨てられる前に大人が自分の落描きやメモ書きのために利用することを考えておきましょう。

2020年09月30日