ぼんやりする時間

少し前から「マインドフルネス」や「瞑想」ということが注目されました。世界の先端で活躍する人々がそれらを日常に取り入れて、活躍していると報じられたからです。

私自身、牧師として学ぶ中で「黙想」とか「メディテーション」、「沈黙の時間」といった瞑想に通じる事柄に触れることができました。今も15分間の「黙想」の時間を持っています。わたしの実感ですが、昼食を抜いてもパフォーマンスは落ちませんが、15分間の
「黙想」の時間がないと、午後のパフォーマンスは確実に落ち、疲労感も大きく感じています。

脳は一日の消費エネルギーの20%を使うそうです。その中で、さらに60%以上がDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)という脳回路で使われるそうです。

DMNは、意識的な活動をせずに「ぼんやり」しているときに働いている領域です。この後の活動に備えて、脳内の情報をまとめあげる重要な領域だと言われています。

さらに、DMNの働きが、脳の中の情報(記憶)の断片を繋ぎ合わせ、思いもよらない「アイデア」を生み出しているのではないかとも考えられています。

このような重要な働きが、表面上は「ぼんやり」しているときに脳内で行われています。私たちは、「ぼんやり」していると「時間がもったいない」と感じてしまいます。しかし、「ぼんやり」することこそ、脳にとって貴重な情報整理の時間であることを知って対応すべきでしょう。

例えば、子どもが何もしないで「ぼんやり」していると、思わず声をかけたくなりますし、新しい活動に誘いたくなります。しかし、幼児期の子どもが一日の中で触れる情報量は極めて膨大です。さらに現代の子どもが触れる情報量は、江戸時代の子どもの数百倍ともいわれています。つまり、子どもたちの脳は一日の間に大変な疲労を感じています。

受け取る情報を抑え、ぼんやりする時間は決して無駄な時間ではなく、子どもにとって充実した時間だということです。

ぼんやりする時間は、厳密に決めることは難しいと思います。ぼんやりすることが無くても一日を過ごせることもあるでしょう。しかし、それでもぼんやりする時間を確保することには意味があると思います。ぼんやりして過ごす中で、子どもは楽しい時間を過ごすことができるからです。ぼんやりすることで、情報の断片が繋ぎ合わされていくということが、子どもの内に「空想」を生むからです。

ぼんやりする時間は、子どもの完全自由時間です、寝転がって過ごそうと、絵を描いていようと、何だか大人の目から見て何を目的としているのか分からない活動であっても、せいぜい20分程度そんな時間を過ごさせるだけで、随分と疲労感が減ります。こういった時間の後には、集中力も体の活動のパフォーマンスも上がります。結果として子どもは達成感のある時間を迎えることができます。

2020年10月05日