ダメな所が気になる時

子どもの良い所を褒めようと思っていても、ダメな所ばかりが気になって、結局注意してばかりという事もあろうと思います。そんな状況が続けば、次第に注意の声も大きくなって、一日の終わりには声が枯れてしまうという人もおられるかもしれません。

欠点ばかりが目に付いてしまうというのは、実は自然なことです。異常なことではありません。人間は悪いところにこそ注目して、危機的な状況を回避しようとする働きを持っています。人間の生き延びるための本能のようなものです。

親は子どもをよく見ています。だからこそ、ダメなところがますます気になってしまうのです。愛情があるので、子どものダメなところを直さないと、子どもがこの先生き辛くなってしまうのではと心配になるのです。

子どもの出来ないところばかりを見て、その度に子どもを叱ってしまうからといって、自分のことをダメな親とは思わないでください。それは、子どもの幸せな生存を願うからこそ、親としてまず当然のことだと受け止めてください。

ただ、それを子どもに対してどうフィードバックしていくかについて幼児教育から学ぶ必要はあると思います。ダメと思えることに気づくことはしかたありません。しかし、それを指摘することが果たして改善になるのかどうかです。

人間はダメな所を指摘されると、反射的に心も体も身構えます。ネガティブな声掛けを信頼する人から聞くと、その通りに受け取ります。そして、「ダメだ、できない」という風に自分を捉えます。思考は行動に強く影響しますから、自信を失い、諦めてしまいます。改善して欲しいと思っていたところは、改善されずに残り続けることになります。

ほんの僅かでも良いところが見られたら、できて当たり前と思って流さずに、良いことこそ声をかけるように心がけてみましょう。子どもに、「あなたにはこんな強みがある」、「あなたはこんなうれしいことをしてくれる」と、子どもの自己理解に自分の強みや良い所を教えてあげてください。

それでも、どうしても良いところが見つからないと思う時でも、一呼吸置いて子どもへかける言葉を準備するようにしましょう。「いい加減にして!」とか「さっさとしなさい!」といった「反射的」な指摘ほど、双方にとって不利益をもたらす可能性が高いです。ほんの一呼吸でも置いてみてください。

子どもが何度も同じ失敗をしてしまう時にも、「以前よりも、できるようになっている。わたしはそう思うよ」という声掛けで指摘するようにします。この場合に、「わたしは~と思う」と伝える事がより良いです。本人が出来てないと思っていても、他の人からは良くなっていると見られているということを知らせるからです。そして、「次はきっともっとできるようなると、私は信じてるよ」と、次への期待を伝えてください。本人がどう思おうと、期待されていることを伝えるのです。

また、幼稚園でもよくあることですが、例えば子どもは「触らないで」と言われるとほぼ確実に触ります。人間の脳は「否定」を理解する事が苦手なのです。改善して欲しいことを「~しないで」と伝えるよりも、しない代わりに何をしてほしいのかを伝える方が効果があります。「触らないで」というのではなく、「手はおひざに置いておいてね」とか、「布巾を持ってきて」というふうに伝えるようにしています。

2020年11月19日