行動から気持ちへ

行動は目に見えるので、そのことに意識を奪われがちです。たとえば、子どもがお友だちを叩いてしまった時に「叩いた」という行動だけが前面に見えるので、大声を出して叱ってしまうことがあります。

しかし、その時の子どもたちにとって大切なことは、なぜその行動が出てしまったのか、ということです。言い換えると、「気持ち」や「感情」という見えないものに注目してあげることです。

その時には、大人はできるだけ冷静さをもって、その子がどうして「叩く」という行動を選んだのかを、気持ちを聞いて知ることがその後の「叩く」という行動を無くすために大切です。

「なんで叩いちゃったの?」、「その時、どんな気持ちがしたの?」、「次はどうしようか?」と尋ねます。「おもちゃを取られた」、「嫌なことを言った」、「聞いてくれなかった」など、何かしらの理由があります。この場合、その理由が叩いたという行動を正当化するものということではありません。しかし、行動が起こるには何らかの理由があって、そのことを共有することで「でもね」と、叩く以外の解決があることを考えるための準備ができます。

「おもちゃを取られたのね。そうか、それは嫌だったね。『でもね』、叩くのはダメだよ。叩いたら痛いよね。叩かれても、何がいけなかったのか、お友だちは分からないよね。」というように、「でもね」と続けて、なぜその行動がいけないのか、理由を説明することが大切です。そのために、まず気持ちを聞いて、その気持ちを感じたこといけないのではない、ということを認めることで、その後に続く言葉を子どもは受け入れやすくなります。

幼児期の子どもは、まだ気持ちを上手に言葉にできないかもしれません。その時は、「嫌だったの?」とか「くやしかったね」というように気持ちを言葉にすることで共感を示します。その上で、「でも、してはいけないことがある。その理由はこうだよ」と伝えます。

そして、「またおもちゃを取られたら、その時はまず先生に教えてね。お友だちに一緒にお話ししてあげるからね」というように、叩く以外の方法を示します。この時に大事なのは、その子を尊重することです。「まだあの子は小さいからゆるしてあげなさい」というようなことは、子どもにとって受け入れがたいことです。

子どもへのメッセージは「あなたのことが大切だから」ということから発せられるメッセージであることが大事です。あまり「あなたの方が我慢しなさい」とか「それぐらいで叩かないの」という子どもが自分が軽んじられているように感じてしまうメッセージは避けるべきです。また、言っても分からないから、と決めてしまうのは子どもの人格に対する侮辱です。それは絶対に避けましょう。人は侮辱に対して敏感な生き物です。そして、「目には目を」の言葉の通りに、自分を軽んじる人間を軽んじるようになります。

2020年11月25日