詩 「謝罪」

「謝罪」
(詩・小野省子 『おかあさん、どこ』より)

「おかあさん、ごめんなさい」
眉間のしわをうかがいながら
幼い娘は おびえた声をあげた

無力の者の謝罪はせつない
私は 後味の悪いつばを飲みこんだ

窓の外で 五時のチャイムが鳴っている
部屋の中に 夕闇がしのびこむ

あと数年で 未熟な母を飛びこえて
幼い娘は 成熟した子供になるだろう
そして私を見下ろして言うだろう
「お母さん、ごめんなさい」
その時私は
自分が無力の者になったことに気づく

※松居和先生から「おかあさん、どこ」(詩・小野省子さん)という小さな詩集をいただきました。20冊程ありますのでご希望の方に差し上げます。ご希望の方は有馬までお声をかけてください。

2018年10月05日