失敗を伝える

先日届いた雑誌(『保育ナビ』2018年11月号)の記事に、こんな一節がありました。

「今の子どもの教育に必要なのは、『失敗と挫折』だと私は思っています。今のお母さんたちは『失敗してはいけない』『間違いなく』『キチンと、早く』と、失敗しないことにとても一生懸命です。でも、親が自分の経験した失敗や挫折を、どれだけ子どもに語れるかのほうが、実は大事なことなんですね」(大日向雅美先生 恵泉女学園大学学長)。

子どもの経験に失敗はありません。何度もこれは繰り返しお伝えしたいことです。「失敗」は「学び」です。必ず成長の糧になります。だから、勇気をもって、必ず失敗するだろうと思えることも、挑戦させることが大切です。

見込み通り失敗しても、その時に「ほら、やっぱりできなかったでしょう」と言われたら、再度挑戦する意欲を損ないます。ですから、「お母さんもできなかったことがある」、「お父さんもできなかったことがある」、と失敗の経験を伝えてあげでほしいです。失験は必ず誰にでもあることを伝えて、失敗は「悪」ではないことを教えることが大事です。失敗を続けて、それでも挑戦を重ねると、工夫が生まれます。改善が生まれます。これこそが「学び」です。

どんな挑戦であれ幼児期の子どもにとって全てが「本番」です。「失敗してもいい」と挑戦する子はいません。「これは遊び」、「これは真剣」、という区別はないのです。いつでも成功を目指す挑戦です。「遊び」は「遊び」という名の本番です。「練習」も「練習」という名の「本番」なのです。いつだって子どもは成功を目指しています。だからこそ、失敗を成長の糧にすることができます。

大日向先生は、教育には「失敗と挫折」が必要だと言われました。私も教育を与えられている期間に、たっぷりと失敗し、工夫と改善に熱心に取り組めることが大事だと考えています。「失敗させては可哀そう」と「できること」だけを与えられるということは、成長の機会を奪われているのに等しいのです。子どもにとって最大の成果は成長することです。成功することではありません。そして成長とは、これまでの枠を超える挑戦から得られるものです。できることというのは枠の中のものです。そこには成功はあっても成長はありません。しかし、成長するには失敗の可能性を引き受けて挑戦する必要があるのです。

この挑戦に向かう子どもにとって安心を与え、力を励ますのは、失敗し、挑戦を続けて成長を獲得した憧れの「大人」の姿なのです。

2018年10月22日