子どもの挑戦を手伝う

子どもが何か活動に没頭しているとき大事なことは「口を出さない、手を出さない」ということです。見守ることが大事です。しかし、やがて子どもの挑戦が限界を迎えたときには、「お手伝いしようか?」と幼稚園の先生は声をかけます。

もちろん、そのお手伝いとは先生がやってしまうということではなく、例えば子どもの手を取って一緒に行うことなどを意味します。あるいは、課題を一つだけゆっくりと子どもが見られるようにやってみせるのです。

そういったタイミングはどうやって計るのかと思われるかもしれません。先生は一人につきっきりというわけにはいきませんし、子どももそれを求めているわけではありません。しかし、子どもの方からどうしても助けが必要な時にサインを出すのです。先生に声をかける子もいますし、「ふー」と大きくため息をつく子もいますし、きょろきょろと周りを見回す子もいます。サインは様々ですが、これまで没頭していたものから視線が外れるといった様子が出ます。その時に「お手伝いしようか?」と声をかけるのがちょうどよいタイミングであり、それまでは声をかけずに距離感をもって離れているのが良いのです。

「お手伝いしようか?」と声をかけても、もう少し自分で頑張りたい子は「あっちに行って!」と言ったり、聞こえないふりをしたりします。そのときはまた距離を離して見守ればいいのです。子どもは大人を信頼していれば、助けが必要な時には声をかけてきます。

西荻学園幼稚園の方針の中で「丁寧・適時・適所なかかわり」というのは、このような子どもの自主的な活動に対する先生の姿勢を意味しています。

ところで、このように助けが必要となった子に、先生はなるべく早く応えようとしますが、場合によっては他の子の手伝いをしていることもあります。そんな時は、「これが終わったら行くから、それまでもう少し自分でやってみて」と、順番を明確に伝えて自分なりの試行錯誤をしながら待つようにうながします。もちろん次の子がいるからといって、今向き合っている子を疎かにはできません。理想は「その子にもまんべんなく、助けが必要な子にしっかり時間をかける」ということです。しかし、そのために子どもは「順番待ち」をしなければなりません。

かわいそうに感じられるかもしれませんが、待たせてしまう子は次の機会に優先してあげます。また、試行錯誤をしながら待つように促すと、その間に一瞬でも課題から気持ちを解放したことで、取り組んでいた活動への新しいアプローチを発見して解決してしまうことも少なくありません。「もうできちゃったよ」と得意な顔の子に、「先生はあっちに行って」と振られることも多くあります。

兄弟姉妹のいない子どもの中には自分の番を「待つ」ということに慣れていないために、無理に先生を引っ張っていこうとする子もいますが、先生が必要な時に丁寧にかかわることを繰り返していくうちに「待つ」ことができるようになります。

2018年10月26日