ごっこ遊びの深さ

ごっこ遊びは、子どもたちの発達にどのような意味を持つでしょうか。保育関係の論文では、ごっこ遊びの意義を「他者理解」とか「役割取得」といった用語で分析しています。これは、子どもの想像力や協調性といった社会性の発達に影響を持つということです。

これは、今日ではむしろ「コミュニケーション力」を育むと理解する方がわかりやすいと思います。ごっこ遊びは不得手な子は、コミュニケーション力に関わる能力の発達が未熟なのだと理解できます。先ほど「想像力」や「協調性」という言葉を使いましたが、具体的には「お互いのイメージの共有」を目的とするために、相手のイメージを汲み取る力が必要であり、相手の伝えるイメージを説明する言葉を理解する読解力が必要であり、共感が必要です。さらにそれは一方通行のものではありません。自分の側から情報を伝える伝達能力や要求を通す交渉力と説得力が必要です。ごっこ遊びの中で自分がどんな役割を果たすのか。自分たちのごっこ遊びをする集団の秩序と境界線をどうするのか(例えば、「年中さんだけ」、「女の子はいい」、「先生はダメ」といったグループの境界線や役割上の秩序がごっこ遊びには必ず現れます)。

これは私の私見ですが、最近の企業では部署の「リーダー」を育てるために「ロールプレイ」を取り入れるところがあります。ごっこ遊びはそれに近いと理解するのが良いと思います。大げさに思われるかもしれませんが、ごっこ遊びで要求される能力はチームリーダーに求められる能力と同じです。

ごっこ遊びに参加する子ども同士が対等に交渉を行い、その中からごっこ遊びを牽引するリーダーが生まれていきます。しかしリーダーの地位は安泰ではありません。常に要求を突き付けられ、不平を言われます。そこで怒ったり、乱暴な態度をとれば、ごっこ遊びからはじき出されます。この点、子どもたちのとる態度は極めてシビアです。リーダー失格となれば、もうそのごっこ遊びに自分の居場所がなくなります。自分から新たなルールの中で役割を獲得する努力(謝罪や役割の変更等)をしない限り、別の遊びに向かうしかないのです。

ごっこ遊びが示すコミュニケーション能力とは、単に言葉のやり取りをするということにとどまりません。コミュニケーションの本質は「想像力」と「交渉力」です。豊かなイメージを共有し、交換して常にごっこ遊びは発展していきます。

このように、ごっこ遊びを通して子どもたちは、この後の生涯において宝となる「人の間で生きていく力」を鍛えているのです。

2018年11月26日