甘え上手な子はリーダーの素質があります

「先生、見ててね!」、「ママはわたしといなさい!」、こんな風に母親や先生にくっついて離そうとしない子が必ずいます。心配して早く引き離す必要はありません。たっぷりと甘えさせてください。甘えさせるのは、何歳まででもいいのです。べったりと甘えていた子も、ある時を境に親や先生からどんどん離れて「ママは見なくていいの」「先生は向こうへ行きなさい」等と言って自分からお友達の中に入っていきます。しかもやがてお友達同士の遊びの中でリーダー的な存在になります。

思うに、甘えていた自分をどのように接して助けてくれたか、守ってくれたかを肌感覚でスキルとして覚えていくのではないかと思います。自分が頼りとされたときに、お友達を助け、喜ばせる接し方を選ぶことができるようになるのです。甘える子は、とても面倒見がよい子になります。

エリクソンという学者は、無条件の愛を受けた基本的信頼が自己への信頼を育てる、という趣旨のことを語っています。甘える自分を受け止めてもらったいくつもの経験は、他者への思いやりにつながります。ですから、子どもが甘えてきたらむしろ喜んで欲しいと思います。しっかりと甘える子の中で他人と協働する力が育っていると思ってほしいです。

しっかり甘えることができた子の育てるリーダーの素質は成長にともない大きな影響を持つようになります。一人で何でもやるのではなく、周りの力を借り、皆の力を束ねて、一人では達成できない難しい課題を乗り越えていくからです。これは集団知を形成することで、一人の天才を超える力を発揮して殆どの歴史を重ねてきた人類にとって極めて重要な素質です。

最近の小学校では「1/2成人式」というのをします。その時にある小学校では宿題として「親に抱っこされる」という課題を出す、という話を聞いたことがあります。小学校の高学年ともなれば、「抱っこして」と言うのも恥ずかしかったでしょうし、親の方もためらうこともあったでしょう。しかし実際に抱っこされた子は皆、満足した表情を見せ、「嫌だった」という子はいないそうです。逆に現代は、抱っこをねだるのも抱き上げるのもためらう必要のない幼児期に甘えきることができずに心の不安定さを持つ子どもたちが見られるということなのかもしれません。

いつまでもご自分にくっついて離れようとしないお子さんを「このままでは皆の中で孤立してしまうのでは?」と心配されたり「お友達と遊んで来なさい」と無理に押し出す必要はありません。お子さんが満足するまで甘えさせてください。子どもはいずれ必ず親を置いて離れていきます。

2018年09月11日