お手伝い

「根拠のない自信」を強めるときの最善の方法は、子どもにお手伝いをしてもらうことです。うまくいけば親も子も幸せになれます。

最近は家事を子どもに分担させる家庭が減っています。これは親にも子にもマイナスなことです。家事は文字通り「家庭の仕事」です。その過程に所属する家族が応分に負担するのが最善なのです。そこに子どもを参加させないのは、子どもを一人前の家族として扱っていないということです。この考えは、子どもの権利を無視した「過保護」です。子どもには家庭に「参加する」権利があります。家庭の仕事を分担することで自分自身を育てる権利があります。子どもに何もさせないことが大事にしていることだと思うのなら、大変な勘違いです。幼稚園では夏休みや冬休みといった時期に「お手伝いをする」ことを子どもたちと約束し、休み明けには休みの間に習慣としたお手伝いをこれからも続けるように伝えています。

幼児期の子どもには、簡単なお手伝いを丁寧な言葉で頼んでみます。その際、例えば「お皿を並べてね」と言っても、子どもはどうすればいいのかわかりません。最初はゆっくりと食器棚からお皿を取り出し、両手で持って落とさないようにテーブルへ運び、どの位置に配置するかを見せてあげます。言葉で説明するのではなく、やり方を「見せる」ことを大事にしてください。できたら「助かったよ、ありがとう」と感謝の気持ちを伝えてます。子どもは「自分でできた」という成功体験を得ます。頻繁にお手伝いを頼んでほしいと思います。

小さな子に手伝わせるよりも、大人がやってしまった方が早いことは沢山あるでしょう。しかし、あえてお手伝いを頼んでください。この家庭の一員として仕事を果たすということは不思議なほどに子どもに自信を与えます。お手伝いを果たすことで、秩序感を強くしている時期の子は「責任」ということを学びます。これは将来、社会の一員として振舞うことを求められるときに大きな力となります。

最後に、お手伝いを頼んだ時の注意点を述べておきます。それは「出来不出来をとやかく言わない」ということです。幼児期の子にお手伝いを頼むのは、成功体験を与えるためです。難しいことや、失敗しやすいことは頼まないでください。多少出来が悪くてもまず「助かったよ、ありがとう」です。それから、もう一度やり方を丁寧に見せてあげればいいのです。「こうすれば、もっときれいに(上手に)できるよ」と向上することを教えてください。

お手伝いとは家庭という社会への貢献です。社会経験の一歩です。「自分の力でやりたい」と強く願っている時期に、自分の力を発揮して「人の役に立った」、「人を助けた」、「人から感謝された」という喜びの体験は、言語、思考、コミュニケーションといった面でも発達を促します。お手伝いを通して、「どうしてこうするのがいいのか」を話せば知識が増えます。子どもに尋ねて考えさせると考える力を育てることができます。お手伝いには子どもの好奇心と探求心を満たす要素が満載なのです。

2018年12月23日