競争‐根拠のある自信へ

これまで「根拠のない自信」について書いてきました。それは、幼児期には「根拠のない自信」を育てることが大事だからです。しかし、いつまでも根拠のないままではいけません。「根拠のある自信」も育てられる必要があります。

「根拠のある自身」を育てる時期は幼児期の後半からです。およそ小学校入学を意識するころからでしょう。それまでは「根拠のない自信」を優先すべきです。

「根拠のある自信」は、競争や継続といった実績によって得られるものです。スポーツやダンス、音楽や劇の発表会など、人前で競ったり披露したりする経験によって得られます。特に小学生になったら「競争」と「継続」を意識して活動させることも大切になってきます。

「競争」というと反対される意見をお持ちの方もおられるでしょう。私は、子どもが意欲をもって取り組んでいる事柄に関して、「競争」を取り上げるのは避けるべきだと考えています。「負けたら可哀そう」というのは、子どもの意識ではありません。負けを経験した子どもと向き合うことを避けたい大人の意識です。子どもを守るように見えて、実は大人を守るための発想です。本来、子どもは「競争」が好きなのです。負けて悔しくても、また競いたいと思うのです。「負けたら可哀そう」という状況に子どもが陥るのは競争の目的を間違えて教えているからです。

私自身は学校の成績に関わる学力向上に競争を持ち込むことには反対ですが、課外活動で意欲的に取り組む子どもの発達には「競争」が必要な要素だと考えています。その際、競争の目的は「相手を打ち負かす」ことでも「優越感を味わうため」でもありません。これを目的にすると子どもは褒めてもらうために「必ず勝てる相手」を見つけ出します。そこに「根拠のある自身」は一切育ちません。育つのは、「負け=悪」という怯えです。

子どもを競争に継続的に参加させる目的は、「自分に気づかせる」ことと「心をしなやかにする」ことです。競争を通して子どもに自分の強みに気づかせ、強みをさらに磨くことで「根拠のある自信」が育ちます。そして、競争する中で出会う困難や敗北から立ち上がり、「心をしなやかに」することを知ります。自分の蓄えた力を発揮することができます。その結果「根拠のある自信」が育ちます。

競争すれば敗者になることもあります。そこで、「もっと頑張ろう」と思うか、「今度はこういう練習をしてみよう」とか、あるいは「別の方法でやってみよう」とか、さらには「別の分野でがんばろう」ということを思うかもしれません。競争相手の「強み」を理解し、自分自身に対する思考を発展させたり転換させたりするきっかけが、敗北によって与えられます。

自分の強みや弱みをわからないままになると、「何となく」という根拠ない判断で人生を歩むことになります。自分のことがわからないままでは、何を決めるときも「何となく」、そして感謝もないままに「生かされる」人生になりかねません。むやみに競争を取り上げることは、子どもの人生を祝福することに繋がらないのです。

2018年12月28日