一人遊び

「お友達と一緒に遊べてますか?」というご心配をよく聞きます。保護者はお子さんとお友達のとの関係をとても気にされます。そのお気持ちはよくわかります。しかし、子ども同士の間で不和があったり、ケンカしたり、無視したりといった葛藤とトラブルがあるのが普通です。保護者や先生の見守りとサポートがある時期に基本的な人間関係の葛藤を経験しておいた方がいいと思っています。

成長とともに子どもの動きは大きく活発になって、保護者とすれば走り回る姿を見て衝突しないかとハラハラし、皆と離れて一人で大人しくしていると「いじめられてないか」と心配してしまうのが幼児期です。この時期の子どもたちは、周りからは友達同士で遊んでいるように見えても、実際は「一人遊び」の延長線上でかかわっている時期です。同年代ではなく大人との一対一の関係を求める子もいます。幼児期はどんどん視野を広げていきますが、発達心理の面からは、まだ主観と客観の区別が未分化だと言われます。物事を自分の視点や経験を中心にして捉えるため、自分があ集団の一員であるという自覚はあるのですが、他の人のことを客観的に見ることができないために相手の「気持ち」を理解できる段階には至っていないのです。9~10歳ごろまで自分と周囲を区別できないという意見もあります(ルドルフ・シュタイナー)。

「一人遊び」は主観の中で生きる子どもにとって必然的な遊びの形です。無理にお友達と遊ぶことを強要されずに「一人遊び」に没頭していた子の方が客観視を始めた後のお友達との関係が上手にできるようになるようです。「自分の世界」を一人遊びを通して構築した子は、周囲から魅力的に見える、と言われた先生の話を伺ったことがあります。

逆に一人遊びが中途半端に中断されてきた子は、他の子に興味を持ち始めると、遊んでいたおもちゃを勝手に取ったり、苦労して皆で作った砂山を勝手に触って壊してしまうといったことをします。他の子は自分の遊びを取り上げられたり壊されたりするのですから、いい気分がしないのは当然です。さらにネガティブな特徴として、集中力が続かない、すぐに投げ出す、情緒不安定といった面が見られます。「一人遊び」は字を読めるようになったり、テレビ等の情報を楽しめる年齢になると難しくなります。手指をつかって夢中になれるような環境がなくなっていくからです。

コミュニケーション能力を駆使したアクティブな人間関係を持つための力は、実は一人遊びに没頭する幼児期に力を蓄えているのです。

2018年09月12日