遊びは育ちの必須栄養

遊びは心の柔軟性と、順応性、創造性に深くかかわります。また遊ぶことによって共感や倫理といった社会性を身に着けていくことができます。幼児期に知識を詰め込むより遊びを通して社会性や情緒面を育てる方が、生涯的には成功につながるという研究結果がいくつも発表されています。およそ共通することは、幼児期によく遊んでいた子どもは、自分から問題を見つけ、解決のために自分で考え、学び、反復し、努力し、行動する力に優れているということが言われています。
人間と遊びに関する研究は、古くて新しい研究分野です。かつては哲学者が人間の定義として「遊ぶ」ということを語りました。現代では生理学や心理学、進化生物学、分子生物学などの様々な分野で研究されています。その結果はいずれも人間にとって遊びがどれだけ重要なものかを示しています。
人間は生まれながらにして遊びを通して問題解決能力を獲得していきます。赤ちゃんは音のなるおもちゃ振って遊びながら、原因と結果の関連性を学習していると聞いたことがあります。人の真似をして遊び始めるのは、記憶の出し入れが遊びに発揮されているからです。さらに人の真似を通して、どうしたら同じことが再現できるかという課題に対する問題解決能力を学んでいきます。子どもの動きや表情に大人が反応して笑いかけるのも、子どもにとっては大事な遊びです。子どもは何度も同じことを繰り返すことが好きですが、それは自分の行為に対して反応する周りの対応を得ることで、行為を共有して認知能力を高めています。認知能力が育つということは、事象と言語と意味が結びつくということです。幼児期に一人遊びから友だちとの遊びの世界へ進み、「ルール」が遊びに取り入れられると、もはやこの遊びは何のため、という単純な理解では済まないほどに遊びによって高められる能力は爆発的には増えます。身体的にも、心理的にも、精神的にもです。「ごっこ遊び」は、役割担当を決め、時に譲り合い、交替で行うルールが共有されます。「やりすぎ」への注意が喚起され、ルールを守ることが求められます。自己肯定感、幸福感、満足感、おもいやり、共感、交渉といった人間社会の健全な一員となるためのスキルを、小さな共同体を遊びのたびに子どもたちは創造して獲得しているのです。
遊びは「さぼり」でも「怠惰」でも「わがまま」でもありません。成長に食事が必要なように、人間が成長するには遊びは必須の栄養なのです。本質的に、成長に関わる「遊び」には善悪はありません。だから、子どもの遊びの色々に苦笑いして、ちょっとため息をついてあきれ、振り回されて、でも遊びの奇抜さに感心して、「この子はやっぱり天才だ」と思えたら、その時子どもは栄養満点の遊びを満喫していると思います。

2019年04月10日