火事場の馬鹿力

幼児期に夢中になって満足するまで取り組む経験は貴重です。この時の子どもたちの集中力について輝きベビーアカデミー代表の伊藤美佳先生は、「火事場の馬鹿力と同じ」と言われています。火事のような切迫した状況で、普段では想像できないような力を無意識に発揮することが、火事場の馬鹿力です。それぐらい、ものすごい集中力が発揮されるのです。
子どもが集中している時、子どもを見守る大人は、「決して話しかけない、音を立てない、邪魔をしない」ことが大事です。真剣な顔で取り組む時に、中には鼻水を垂らして没頭する子もいますが、話しかけたり拭いたりしない方が子ども為です。
私は、幼児期の一人遊びは、大人に勧められてお友達と遊ぶよりも遥かに重要な遊び体験だと思っています。幼児期に火事場の馬鹿力に喩えられたような集中力を発揮する経験を沢山することは、必ず将来、取り組むべき、避けてはならない課題を担う基礎となる力となります。人間はやりたいことをやって力を育み、やりたくないことであっても責任をもって取り組むことで大人となるのです。
子どもを褒めることは大切なことです。しかし、褒めるタイミングの方が褒める量よりもはるかに重要です。集中力を発揮している子どもを褒めても、子どもにとっては迷惑でしかありません。本当にやり抜くべきことが中断され、出来なくなってしまうからです。
幼児期に自分の世界に没頭することが、結局、自立を作ります。いつまでもママにやってもらっては自分でできませんし、自分でやろうともしません。言われたとおりにするだけでは伸ばしようのない能力が人間にはあるのです。
幼稚園に、掃除をする身としては困ったところに毎日砂を山のように運んでくる子がいました。何度担任の先生が注意してもやめないので、いっそ掃除の仕方を工夫した方がよさそうだ、と発想を変えてやらせてみたところ、一週間も続けたらその「遊び」をやらなくなっていました。たとえ大人から見るといたずらにしか見えなくても、子ども自身が決めてやっていることです。何らかの育ちの欲求が子どもを動かしていたのです。子ども自身が、今ここで必要だと求め、決めているとき、育ちにおける「火事場の馬鹿力」が発揮されています。

2019年05月17日