子ども専用のスペース

私たち大人は、子どもに伸び伸びと遊んで欲しいと思って広いスペースを準備します。外で走り回ってサッカーをしたり、鬼ごっこをして遊ぼうというのであれば、広い空間が必要となります。しかし、それ以外の遊びでは、子どもが必要とするスペースは、私たち大人が抱くイメージよりもずっと小さいものです。
砂場で熱心に遊んでいる子を観察すると、一人の子が砂場全体を使って遊ぶということはまずありません。しゃがんで自分の手の届く範囲で熱心に砂をいじっています。幼稚園では落書きのためにチョークを用意しています。落書きを地面に書く時にも、チョークで書ける床面スペース全体を使う子はほとんどいません。おままごとのスペースもよく見ると広げたシートの片隅でわざわざ集まっています。
それなのに何故広いスペースが必要と感じるのかというと、子どもたちの遊びが次々と変わるので、それに伴って場所を移動するからです。おままごとをしていた子どもが、おままごとを放って別の場所で木登りを始めます。やがて、またおままごとに戻ると、次は上り棒に行ったり、鉄棒に行ったりという具合です。実は遊びを単体としてみると子どもの遊びが支配できるスペースは大変小さいのです。
子どもは意外と狭いスペースで落ち着くものです。それが子どもにとっての「自分の場所」として支配できる範囲を意味しています。幼稚園の教室いっぱいに広げられたおもちゃをかたずけるのは、子どもにとっては重労働です。しかし、狭い場所を指示して、「ここがAちゃんの場所だよ」と教えると、その場所の片づけはその後、指示されなくても自分からできるようになります。
ご家庭のリビングなど、大人のスペースは子どもにとって大きいので、その中に例えば体格に合わせた幼児用の机と椅子を用意して、「ここがあなたの場所」として与えてあげると、そのスペースの中で遊び、そのスペースの中の片づけをするようになります。朝起きると、まず「自分の場所」に行っておもちゃを取ってくる、自分のカバンを取ってくる、といったことも出来るようになります。
「子ども部屋」は、体格の小さな子ども時代には広すぎるスペースであることがしばしばです。結果として「片づけられない」、「整理できない」と叱られるより、子どもに合わせた「狭いスペース」を与えた方が良いことが多いのが幼児期です。

2019年06月04日