段階をふんで育つ大切さ

「まず茎、次に穂、そしてその穂には豊かな実ができる。実が熟すと、早速、鎌を入れる。収穫の時が来たからである。」

上記の言葉は、聖書のマルコによる福音書4章28~29節の言葉です。麦の成長には順序があって、それぞれの段階を疎かにしたり、ましてや順序を飛ばして豊かな収穫を得ることはできません。

人の成長においてもきちんと段階をふんで育つことが大切です。例えば子どもが歩くようになるには4つの重要な段階をふんでいきます。

第1段階 手足を動かすが、体を移動させるためには手足を使えない「移動しない運動」の段階。

第2段階 腹部を床に押し付けながら決まった方法で手足を動かしてAからBへと動けることを覚える「腹ばい」の段階。

第3段階 重力に逆らって、自分の手と膝で体を起こし、腹ばいより巧みな技術をもってAからBへと動き回るようになる「四つんばい(はいはい)」の段階。

第4段階 自分の脚で立ち上がり、歩くことを覚える「歩行」の段階。

この4つの段階は、各段階が次の段階に不可欠前提となっています。このことから成長において新しい段階を獲得できるかどうかは、その前段階を確実に終了できたかに全面的にかかっているということです。

早く自立させようと急かして歩かせる弊害について以前、前段階が十分に獲得できないままに次の段階への移行をを強制されると、前段階を獲得することで置き換えられるべき機能が残り続ける、ということを聞きました。どういうことかというと、例えば反射行動が「腹ばい」や「四つんばい」の状態の乳児のまま「歩行」の段階にいたってしまうと、その後の反射によって生じる運動は「腹ばい」や「四つんばい」の乳児が身を守ろうとする動きが残り続けることになります。そのため大きく激しくなる少年期の運動に適切に体がついていけないといったことや、転倒した時に頭や腹を守るために手をつくことができず、大怪我につながることもあるのです。

前回、習い事のことを記しました。やってみて楽しめればよいし、興味を示さないならやめた方が良い。そして将来興味を持ったならその時改めてはじめればいいと記したのは、この段階をふんだ成長という視点からも重要な態度だと考えるからです。興味を示し、楽しめるということはそこで得られるものを成長の段階として子どもが欲しているということです。興味を示さないのは、まだそれを得るべき段階にいたっていないということを示しているわけです。

段階をふんで成長し「豊かな実」を生きる力として獲得していく子どもたちにとって成長を急かされることは害の方が多いのです。興味を示さなかったり、うまくできなかったり、早くできないお子さんにイライラしてしまう時に、「まだ今の段階を十分に楽しみきっていないのだろう」と思っていただけるとうれしいです。

2018年09月27日