自己肯定感を育てるために

自己肯定感を育てるためには、体と心へのアプローチが必要です。そして自己肯定感は幼いころが最も育ちやすい時期です。思春期を迎えるころには自己肯定感の成長は緩やかになっていきます。それは周囲の肯定的なアプローチよりも、自分の内的な批判の声に耳を向けるようになるからです。これは健全な成長の過程です。自分という存在への不信感を抱き、それまで育ってきた自分への信頼感と新たに気づいた不信感のせめぎあいの不安の中で、「自分は何者なのか」、「どこに帰属しているのか」、「他と何が違うのか」という自己同一性の確立がなされます。ですから、それまでに育てられる自己肯定感は自己同一性の確立に非常に大きな影響を与えます。
体に対しては、生活リズムを整え、十分に体を動かし、たっぷり遊び、健全な空腹を食事で満たし、十分な睡眠をとることです。当たり前のことですが、私たちの体はどんどんと細胞を入れ替えています(例外はあります)。食べたものを材料にして、代謝が行われます。そのためにホルモンの分泌等による絶妙な調整が行われます。そのために生活を整えることが一番有効な方法です。
一方の心に対しては、子どもが「自分は認められ、愛されている」ことを感じられるようにすることが必要です。一番子どもにとって大切なお母さんやお父さんから、長所も短所も丸ごと認められて、丸ごと愛されている、と実感できるかどうかが鍵です。そのために欠かせないのが、接触と言葉かけです。
「“つ”が付くまでは、膝の上」と言われます。子どもの年齢が「0歳」のときは抱っこして、「ひとつ(1歳)」~「ここのつ(9歳)」までは、膝の上にのせてあげてください。勿論、年齢が上になるにつれて子どもは親との接触が少なくなります。それは、子どもの行動範囲や興味関心が広がり始めるからです。しかし、そのような時こそ、安心して迎えてくれる「基地」が重要です。時にはぎゅっと抱きしめてあげることも必要でしょう。互いの顔を見て向かい合うこと、同じものを並んで見ること、そんな「一緒の時間」が自己肯定感を育てます。
中学生に「親に抱っこされてきてください」という課題が出されたそうです。どの子も初めはとても嫌そうな顔をしましたし、自分よりも大きくなっている子を抱っこするのをためらう親も多かったそうです。しかし、意を決して抱っこされると、「嫌だった」という子は一人もいませんでした。むしろ、どの子も実に柔らかい表情で話をしていました。また、親の方も不思議なもので大きくなったことは分かっていたのに、実際に抱っこしてみるとこんなにも大きくなったことを子どもに感謝する気持ちで一杯になったそうです。そして、それは他ならない親の人生が与えた大きさです。そこで新たな自己肯定感の成長を親が得るのです。親子は互いの自己肯定感を育て合うことができるかけがえのない関係です。
そして自己肯定感を育てるもう一つの道具は「言葉」です。自己肯定感を育てるための言葉は「子どもを認める」言葉です。私たち大人は、子どもを認めているようで、実際は多くの否定の言葉で子どもに接しています。教えているつもりで否定する言葉を使います。まず、子どものことを「全肯定」して受け止めることを会話のスタートにしてください。誤りは対話の中で子どもが納得できるように丁寧に伝えます。

2020年03月12日