試行錯誤の積極性

遊びがどれだけ子どもの発達にとって大切かについて改めて語るまでもないでしょう。
心理学者が、遊びにおける子どもの知能発達について以下のような実験をしたそうです。
幼児を3つのグループに分け、1つめにはペーパータオルやクリップといった日用品を大量に与えて自由に遊ばせます。2つめのグループには、大人がそれらの日用品を使うのを見てまねさせます。3つめには、クレヨンで好きに絵を描かせます。
その後で、3つのグループの子どもたちに日用品の一つを示し、「これは、いろんな使い方ができますよね。どんな使い方があるか、教えてくれませんか?」と質問しました。すると、その日用品で自由に遊んだ第一のグループの子どもたちが、圧倒的に多数の個性的な回答をしました。普通では考えられないような、自由な発想も多くでました。
このことから、ものを使って自由に遊ばせることは、子どもたちが試行錯誤しながら道具の性質を知り、自らそれを活かして新しい使用法を思いつく、つまり創造性や柔軟性を培うために有効だと考えられます。
遊びの中での子どもたちの試行錯誤について、ピアジェは「研究」にたとえました。子どもたちは手当たり次第に試しているのではなく、何らかの仮説を立て、その仮説に基づいた行動をしているのです。例えば、積み木を高く積み上げようとするときに、土台の部分を大きく作り、上に行くほど小さな積み木にしていく等です。子どもは遊びの中で試行錯誤をする中で、決して受け身の存在ではなく、積極的に事象に働きかけていて、その「在り方」を知ろうとするのです。幼児期の子は、新しいものを見ると「触らせて!」とせがみます。物によっては触るだけでなく口で咥えることもします。壊してみます。同じものがないか探しに行きます。試行錯誤ができると、子どもは積極的に世界を知ろうと活動します。そこから、思いもよらない私たちも知らなかった世界を見つけ出してくるのです。

2020年03月13日