実習生

新型コロナウイルス感染症のために文科省は教員を目指す学生に実習免除を決め、それに代わる手段を講じることを求めました。
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00288.html
西荻学園幼稚園は、休園明け初日の6月1日から実習生1名を迎える予定が入っていました。さらに6月中にもう1名の実習生の受け入れを予定していました。緊急事態宣言後に心配したことの一つが実習生を約束通り受け入れられるかということでした。先生たちには、「今年は日程を変更することは難しはずだから、再開してすぐで、しかも新型コロナウイルス感染症のために例年と違う保育を工夫する中で大変だろうけれども、必ず実習生を受け入れます」、と伝えていました。実習生との事前打ち合わせはWeb会議ツールを使いました。幸い予定通りの日程で実習生を受け入れることができ、お弁当なしの午前保育という環境でしたが、実習期間を終えることができました。2学期にも2名の実習生を受け入れる予定でいますが、文科省の決定を受けて中止されるかもしれません。
実習生について園長同士の会話で話題になることもあります。また、最近は実習生を送り出している学校との合同懇談の時も準備されています。実習生を送り出している学校の先生は、実習生を受け入れた園の保育者から「実習が終わってからも見返すような日誌を書いてほしい」と言われたそうです。実習期間が終わったらおしまいではなく、実習の終了が学び続ける保育者のスタートであってほしいということだったそうです。
それでは、実習が終わってからも見返すような日誌を学生が書けるために必要なものは何でしょうか?それは子どもが成長するときの原動力と同じく、「楽しい」と感じられることです。もちろんこの場合の楽しさとは、テレビのバラエティーショーのような消費される楽しさではなく、子どもの日々の成長に驚いたり、子どもの育とうとする力のたくましさに感動したり、子どもの興味や関心に寄り添う先生の姿に手本を見つけたりといった、心が動いた経験です。それを「楽しい」と感じ、思い出してもっと保育を深めたい、もっと子どもたちと出会いたいと思えることです。
「実習が楽しいだけでは、現場で通用しない」という意見もあります。保育現場では時につらい経験もすることがあります。しかし保育現場の「楽しい」を感じない人が、どうしてそのようなつらい出来事を克服できるでしょうか。いろいろな出来事があっても、やっぱり「楽しい」仕事だという思いがあるからこそ、次の日を迎えることができるのです。
学校関係者に聞くと、実習がつらい経験で終わってしまう学生がいます。とても残念なことです。こうした学生の多くは重箱の隅をつつくような指導や、園の雑務の担い手として消費されて、「楽しい」と感じる余裕を失ってしまうようです。厳しさやつらさだけが残って、実習での出来事を振り返る気にはならないでしょう。それどころか、せっかく何年も夢を抱いて学んできた道を捨て、幼稚園教師となることを諦めてしまうことだってあるでしょう。
私たちの幼稚園で実習をされる学生が、保育者だけに与えられる「子供の成長の瞬間を一緒に喜ぶ」ような「楽しい」経験をしてもらえるように、迎える幼稚園の質が問われます。「楽しい」を知っている保育者を生むような実習を行える幼稚園は、そもそもきっと「楽しい」に充ちた幼稚園なのだろうと思います。

2020年08月18日