待つ=信じて任せる

子どもは色々と不器用です。始めから手際よく活動できる子はいません。そこで、大人の側に子どもができるまで「待つ」ことが要求されます。
待つことで、子どもは自分でやり切ったという達成感を得ます。達成感は自信を与え、またやってみようという気持ちにさせます。もう一度やってみると前よりも上手になります。そうやって活動をより高度にしていきます。「待つ」ということが子どもの成長を加速させるわけです。
こういった待つことの大切さは、「わかっているけれど、待てない」と思われる方もおられるのだろうと思います。その場合、「待つ」ことを「我慢する」ことと思っていないでしょうか。あるいは、親の都合に子どもをはめ込もうとしていないでしょうか。
「待つ」とは、子どもを「信じて任せる」ということです。決して「我慢する」ことではありません。子どもは、何ができるのか、何ができないのか、何をしたいと思っているのか、何に不安を感じるのか。そういったことを見て取る必要があります。その上で、確信が無くても信頼して任せるのです。「以前、出来ていたから」というのではなく、「自分の信じた子だから、できる」というくらいの信頼をもって任せてみて欲しいと思います。こういったところから大人の方の「待つ」心も育っていくのです。
もう一つ、「待つ」ことは「放置する」こととも違います。どうしても「ここは手伝ってほしい」というサインを子どもが出すことがあります。その時には手伝ってあげる必要があります。
待つことで子どもの成長のプラスになるのは、待てば結果にたどり着けるという場合です。言い換えると、結果にたどり着く道筋を子どもが理解している時です。「何をどうしたらいいのかわからない」という状態にいつまでも放置されるのは、大変な苦痛です。それでは取り組んでいることに興味を持続できないばかりか、もう二度とやりたくないと思うことでしょう。
今の力では対処できないようなことに子どもが困っていたら、助けることが必要です。全部を代わってやってしまう必要はありません。子どもが道筋を得られればいいのですから、「ここはちょっと難しかったね」というところを手伝ってあげれば、あとは子ども自身でできるということもあります。「待つ」ことは単に大人が待機している状態のことではなく、大人の側の手を出さず、子どもを見守り続けるという積極的な子どもへの関与なのです。
しかし、そのように子どものために大人が都合よく自分の時間を与えることができない事もあります。例えば、幼稚園へ9時に子どもを連れて行って、9時15分の電車で会社に向かわなけれならないということもあるでしょう。その時に、子どもが大人の事情を汲み取ってくれず、なかなか準備を進めないので、「もう待てない!」ということもあるはずです。
この場合は、「子どもが自分の力でやろうとしているのに、大人が手を出してやってしまう」、ということとは違います。子どもの行動が遅いために、大人の方が予定を変えなければならないことからくる「待てない」状態です。しかし、誰かの都合に合わせて動くというのは、結構大変な行動ことです。子どもには子どもの精一杯のペースがあって、大抵の子は自分のことで手一杯です。
ですから、こういった「待てない」を少なくするためには、「この子のペースだと、どれくらい前に仕度を促すべきか」を大人の方が逆算しておかなければなりません。そもそも、子どもになぜ急がなければならないのかを説明して、理解してもらっているでしょうか。
「会社に遅刻するわけにはいかないから、9時には幼稚園に着いていないといけない。そのためには家を8時45分には出たいんだ。協力してほしい」と「大人の事情」を説明すると、子どもは大人のお願いをかなえようと協力してくれることも多いのです。
この子どもへの説明を理解してもらうところが「待つ」ポイントなのです。「わたしの信じたこの子なら、協力してくれる」という信頼をもって任せるという「待つ」心が鍵なのです。

2020年08月31日