否定=嫌われた

人間は意外なほどに投げかけられた言葉をそのまま受け取ります。特にコミュニケーションの経験が少ない子どもはそうです。
大人である私たちでも、「ダメ」と言われると、「きっと自分を思っての言葉だ」と思っても、やっぱり落ち込んでしまうものです。大人に対しても否定の言葉はとても強い言葉なのです。まして、子どもに「ダメ」という言葉の裏にある、大人の期待や心配を理解してもらうことはできません。
私たち大人の言葉というのは、かなり気を付けないと「否定」の言葉が多くあります。私自身、幼稚園に関わるようになって、意識して否定の言葉を言わないようにしたら、それまでたくさんの否定の言葉を発していたことに気がつきました。
こちらの思い通りに動いてくれない子に「~ちゃん、ダメ」と言うと、子どもは額面通りに「自分はダメだ」と受け取ります。
まして、親の発する否定の言葉であると、子どもは額面通りに言葉を受け取って「嫌われた」と感じてしまいます。子どもにとって親に嫌われることくらい不安をもたらすものはありません。
親からすると、子どもの存在そのものを否定する気は全くないはずです。子どもの誤った行動、あるいは失敗を訂正してあげたいという気持ちが言葉になっているだけです。子どもの行動に向かって「ダメ」と言っているつもりです。しかし、子どもの方は自分の全てが「ダメ」ととらえてしまいます。そして嫌われたという不安に落ち込んでしまいます。
大人は「うまくなって喜ぶ子どもの顔が見たい」とか、「子どもが持っている力をもっと発揮させてあげたい」とか、「怪我をしてほしくない」というような、子どもの幸せや安全を願って声をかけています。同時に私たちは、私たち自身が安心したいという気持ちがあるのではないかと思います。どうしたら、この思いを否定の言葉を使わずに伝えられるでしょうか。
ある学校で「廊下を走るな」という張り紙を「廊下は歩きましょう」へと変更したら、「廊下は歩きましょう」と書かれていた方が、子どもが廊下を走る割合が圧倒的に少なくなったそうです。
「~してはダメ」ではなく「~しよう」と肯定的に伝えた方が子どもはそのまま受け取って行動しやすくなります。否定の言葉を取り除くことを意識すると、最初は何と声をかけていいのか戸惑うと思います。子どもの「いいところ」や「心地よいこと」を伝えることを意識して見てください。それから、最後に一つだけ、「○○も~のようにできるともっといいね」と伝えることから始めてみてください。
大事なことは、こうした声掛けの後に、直ちに子どもが改善できなくても「否定」しないことが大事です。ここは、「待つ=信じて任せる」場面です。子どもはおとうさん・おかあさんが大好きですから、協力してくれるようになります。

2020年09月01日