インターネットで調べもの

今の子どもたちは触れられる情報の量が非常に多くあります。子ども向けの図鑑や読み物も豊富ですし、漫画を通して価値ある情報が得られます。しかし、何より親世代との決定的な違いはインターネット上のWebコンテンツの豊富さです。「気になったら直ぐに検索」ということが当たり前になっています。

多くの情報に触れることが容易なことは良いことですが、情報に流されてしまう危険もあります。そこで、自分に必要な情報だけを得られるように、情報を取り入れる技術を教える必要があります。

「知りたい」という気持ちは、必要な情報を能動的に得ようとする大事なきっかけです。「夏は何で暑いの?」と聞かれて、直ぐに答えを与えるのではなく、「何でだろうね。一緒に調べてみようか」とか「何でだろう。調べて教えてくれる?」といって「わかった!」と子どもが張り切って取り組んだ時に、貴重な体験が始まります。

子どもが調べたことを教えてくれたら、「そうだったんだ!たくさん調べて、すごいね。教えてくれてありがとう」と感謝し、ほめることが肝心です。

このようなことを、子どもは、知りたいことを調べる方法を得、調べたことを教えると喜ばれる、という体験も得ます。そうして、知りたいことを自分でどんどん調べるようになっていきます。

調べものをするときには、事典や辞典、図鑑、地図などの他に、現在ではインターネットがあります。幼児期の子どもでも、何度か経験すると自分で操作できる、というのが現在のスマート機器の操作レベルです。インターネットでの検索も年長児であれば、できても驚くにはあたりません。

ただし、インターネット上の情報は数を増しても減ることはまずありません。一日ごとに膨大な情報が蓄積されてきます。そこで、インターネットでの調べものをするときに気を付けたいことがあります。それが「次に表示されているお勧め情報を見続けない」ということです。

これはお勧めの関連情報を表示することを「レコメンド機能」と言います。検索をしたり閲覧したりした情報がサイトの運営側に蓄積されます。そして、「あなたへのおすすめ」として、どんどん提供されていきます。インターネット上での情報取得においてこれにはまると、「一日中Youtubeを見ていた」ということが容易に起こります。そのような状態に、人を誘導するためにある機能だからです。

たとえば子どもが「ティラノサウルスの化石が見たい」と思い立って、サイトを検索してスミソニアン博物館のティラノサウルスの化石を映した動画にたどりつきます。動画の中で、ティラノサウルスについての最新の情報に触れられるかもしれません。そこに、「おすすめ」にこんな動画はどうですか、というふうにたくさんのおすすめ動画が提示されます。

それは、別の恐竜の化石を紹介するコンテンツかもしれません。アニメかもしれません。映画の宣伝かもしれません。着ぐるみを来た子ども向けのコンテンツかもしれません。一つクリックすれば、動画の終わる前に次のおすすめが提示されます。

しかも「レコメンド機能」は、使用を続ける中で「閲覧者」の好みを情報として蓄積していきます。結果として、「おすすめ」が「好み」に固定されていきます。調べたい情報と全く関係のないと思われるサイトがおすすめされるのは、検索ワードに関連が無くても、調べている人間の好みにマッチするからです。自分の好きなキャラクターが次々と「おすすめ」されれば、子どもの「知りたい」は消滅してしまいます。

最初にたどりついたサイトは、子どもの「知りたい」という気持ちから見つけ出したものですから、有益な情報です。しかしその後の「おすすめ」の情報を次々と見続けることは、よいことではありません。

子どもは、知識を身につけ、そこに疑問が生まれ、答えを見つけ、次の疑問を生み・・・ということで知恵を深めていきます。しかし「おすすめ」に身を任せているのときには、大事な「疑問を生む」ことができないのです。子どもが疑問を持つ前に、「答え」の方がどんどんと与えられます。一見すると知識が増えるからいいと思いがちですが、知識の量は賢さとイコールではないのです。

取り分け、これからの時代は「疑問を生む」ことができる人が求められます。「これはどういうことだろう?」という「知りたいという気持ち」、「これを解決するために、調べるべき疑問点は何か?」という「疑問を生む/見いだす力」、それこそが人間の力として問われます。疑問を生む力があれば、インターネットはこれまで人類が手にしてきた中で最も手軽で、最も情報量の豊富な検索ツールです。賢い使い方をして、「知りたい」という思いを、どんどんと育てていってほしいと思います。

2020年09月04日