子育ての焦り

子どもの育ちについて「焦り」が生じることがあります。子どもを大切に思っているからこそ湧き上がる「焦り」です。

たとえば、「子どもに失敗をさせたくない」という思いが強くなります。これは、教師も感じることです。そこから、子どもの挑戦の機会を奪ってしまう事につながることがあります。

「危ないから、もっと安全なこっちにしなさい」、「そんなことは得にならないからやめなさい」といったふうに大人の判断で子どもの挑戦に介入します。失敗しないように、親の方が子どもの先回りをしてしまうのです。そして、進むも退くも親が決めてしまいます。

子ども時代にしっかり味わうべきことは「失敗」です。「失敗から学ぶ」という経験です。しかし、先回りされて、進むと退くを決められてしまうと、この経験を積むことができません。

子ども時代に失敗を回避してきた人は、ちょっとした失敗ですぐに諦めてしまう傾向があります。ささやかなミスでもう嫌になり、僅かなミスを訂正されるだけで人格攻撃と受け止めます。必死に失敗を隠そうとします。失敗を必要以上に重大なこととして受け止め、大きな挫折と痛みを感じてしまうのです。

子どもが、テストの点を親に隠すようになります。最悪の場合は、いじめ等の深刻な事態を相談できなくなるかもしれません。

親が先回りをすることなく、幼いころから、できたり、できなかったりする経験をしていると、失敗は悪いことではないという心情が育ちます。失敗は一つの結果であり、結果をそのまま受け止めて、工夫し、見通しを立てて、乗り越えようとします。

先回りされて失敗を取り除かれるよりも、失敗をした後に、「失敗することは悪いことではない」、「やめてもいいけど、頑張ったのに嫌な気持ちのままおしまいにするより、もう一回だけ一緒にやってみよう」と、自分の気持ちに寄り添ってもらう方が、子どもにとって有意義です。

困難を乗り越えていくためには「失敗しても、次がある」、「転んだら立ち上がればいい」ということを身をもって知っているかどうかが大事です。そのために、大人がしっかりと愛情をもって見守っている時に、「失敗」を経験することが必要なのです。そうやって、困難という峠を越えてく心の足腰を鍛えていくのです。

2020年09月07日