日常というイベント

プログラミングスクールの体験教室や、博物館や美術館の特別展、科学館の実験コーナー、スポーツイベントやファミリー向けコンサート等、子ども向けのイベントが沢山あります。

そういったイベントの情報を見て、「特別な体験、有意義な体験を子どもにさせてあげたい」と思われる方は多いと思います。

しかし、幼児期の子どもにとって、毎日の日常も、大人が思う以上の刺激に満ちた時間です。子どもにとって、お父さんやお母さんの日常を一緒に体験するだけで、立派な有意義な体験になります。

例えば、料理をしているときに「そこのキャベツを取って」とお願いして、気を付けながら一緒にキャベツを包丁で切ってみたり、包丁がまだ危ないようでしたら一緒にちぎってみます。それを子どもも見えるように台を準備して、フライパンの中で「ジュー」と音をたてながら炒めると、だんだん野菜から湯気が出てきて小さくなっていきます。大げさに思われるかもしれませんが、こうした体験が、化学でいう「物質の三態変化(固体・液体・気体)」を学んだ時に、水が氷になったり、湯気になったりという変化を「ああ、あのことか!」と合点できるようになります。

大人の生きる日常は、子どもにとって体験の宝庫です。経験の少ない子どもにとって、新しいことが沢山あるのです。商社に勤める親が、「今日はアフリカの○○という国の人と、△△のことで話をした」という話を食卓で聞くと、子どもは知らない事ばかりでワクワクします。新しい家電を買う時に、一緒にパンフレットを広げて検討する様子を見ると、子どもはそこからいろいろなことを学びます。

大人が思う以上に、子どもは大人の日常に触れることで貴重な、有意義な体験をして、刺激を受けています。もっと自信をもって、大人は自分たちの生き方の中に、子どもに伝えてあげたい有意義な体験が沢山あることに気付いてほしいと思います。大人が自分のことを教えると、子どもはその分賢くなっていくのです。

もちろん、参加費を払うようなイベントに行かない方がいいということではありません。そこでは、親と子が一緒に有意義な時間を体験できるものが多くあります。その点では、特に最近のイベントは実に練り込まれ、準備の行き届いたものが多くあります。大人にとっても学びの時、有意義なものが必ずあります。

最後に、子どもの育ちに重要なのはイベントそのものではありません。体験からくる刺激を受けた子どもが、自由に感性を働かせる時間を与えることが大事です。言い換えると「自由時間」が大事なのです。それは、日常での体験であれ、参加したイベントの体験であれ同じです。次から次へと刺激が続くようでは、せっかくの貴重な体験が子どもの中に感性を育てる前に、押し流されてしまいます。

イベントを体験したときは、ぜひ育ちの力を信じて、「自由時間」を与えてください。

2020年09月09日