迷った時には前へ進め

「やればできる」という気持ちは大切ですが、行き過ぎると「できない可能性」から逃げるようになります。しかし、成長は限界に挑戦して得られるものです。

「やればできる」という考えは、成功した経験に基づいています、しかし、いつまでも成功することばかりをしていては成長しません。深まりません。大きくなりません。過去の経験が役に立たないところに向かって挑戦しなければならない時に、成功体験だけを糧に育った自身だけでは行動に移せないことが多くなります。

そこで、もう一歩進んで「やれば少しはマシになる」、「できるかどうかわからないけれども、ともかくやってみよう」という気持ちへと進んでいけると良いと思います。

「ともかくやってみよう」という気持ちは、やろうとすることそのものに好奇心を強く持ったときや、やることで自分の力が伸びると思える時(鉄棒など)、そしてやることに意味や価値があると感じる時(お手伝いなど)、そういった時に育っていきます。

言い換えると、結果ではなくプロセスや行為の意味に成長や価値を感じる人は「とりあえずやってみよう」という気持ちを育てるのです。

プロセスや行為そのものの意味に価値があるのであれば、結果が希望を下回っていても失敗とはなりません。プロセスの途中でしかないからです。失敗は予想していたプロセスの修正を教えてくれるものであって、むしろ意味ある行為です。

「ともかくやってみよう」という思いから始めたことは、簡単には諦めない気持ちを育てます。プロセスを価値とすることで見えてくるのは、0(失敗)か1(成功)かで自分の価値が決まるのではなく、1にも満たない小さな影響であっても0ではない、という自分の行動が与える影響の実感を伴うからです。自分に価値を見出す「自己肯定感」へとつながります。

「迷った時には前へ進め」は、私の基本的な生き方です。新型コロナウイルス感染症のために今年は様々に迷うことが多くあります。

感染症の危険が報じられ、私たちには知識も備えも不十分であったときには、速やかに休園を決めることが当時の「前進」でした。マスクも消毒薬も手に入りにくい中でコツコツとルートを探して十分な量を備え、対策のための道具や機器を整え、少しずつ報じられる知識を自園の環境に合わせて生かすことを考えてきました。

休園とはいっても、毎日幼稚園をおとずれ、どのタイミングで、どの様な体制で再開するかを試行錯誤しました。環境を組み換え、「ともかくやってみて」子どもに向かない、幼稚園の日常の保育にそぐわないことを除き、さらに必要なものをどう理解して受け入れてもらうかをシュミレーションしました。その中で使えない、今では無駄となってしまった物も多くあります。

しかし、「ともかくやってみて」試行錯誤したことで、新しい「前進」へと進むことができました。新型コロナウイルス感染症を理由に、様々な活動を止めてしまうことは簡単です。しかし、「やる」と決めて、どうすればできるかを考え、一回限りの本番へ向けて、無駄となることも承知で様々な備えをします。刻一刻と変わる状況の中で、プロセスを常に修正し、実現への道を再設定します。今も迷いはありますが、「前へ進め」を実践しています。

「ともかくやってみよう」という気持ちを子どもたちも育てて欲しいともいます。経験のない速度で世界は変化し、状況は変わります。失敗や成功を経験する前に、次のプロセスと移り、新しい意味を生きる必要に迫られます。その様な中で、「ともかくやってみる」気持ちは、大事な力になると思います。

2020年11月06日