この子が生きている世界に寄り添う

子育てをしている親は、我が子の個性に悩むことがあります。その特性の強さに「育てにくさ」を感じて苦しむこともあるでしょう。

そうした親は「この先どうなるのか。今、何かをしてあげなければならないのではないか。手遅れになるのではないか」と、必死な思いで情報を集めます。そんなときに孤独と消沈の中にあることも少なくありません。そうした苦しい状況の親にとって幼稚園が心の支えになることはできるのでしょうか。

幼稚園の先生も「こうすれば大丈夫」と安易にいえるものはありません。また、外部の専門機関に繋ぐことだけでは、十分な解決と安心に繋がるとは限りません。

幼稚園の先生に求められるのは、「この子には、こんな思いがあり、こんな良さや重要な意味があります。この子のこういう素晴らしいところを大切にしましょう」と子どもの育ちに伴走してくれることではないかと思っています。

現在が充実した先により良い未来が待っています。とはいえ、今現在、苦しむ親には簡単に理解できるものではないでしょう。先のことは、誰も断定的に答えることはできません。しかし、今、この子が生きている世界を肯定し、この子の世界を大切にして寄り添ってくれる人との出会いは、大きな支えとなるはずです。

そうした幼稚園でのやり取りの中で、似た悩みを持つ親と出会うことも助けになります。悩みを知ってくれる支え合いが、卒園後も続くこともあるでしょう。同じような悩みを抱えた当事者でなければ気付けない思いや、かけられない言葉もあるはずです。

子育ては幼児期だけの問題ではありません。長期戦です。時には子や親に対する周囲の誤った見方にも耐えながら、我が子が我が子らしくあることを支えるのは簡単ではありません。周囲の理解が得られるとは限りません。

そうしたときに、困った時には話してみよう、と思っていただける親子にとっての安全基地としての幼稚園でありたいと思っています。その子らしさを大事にされた子は、時間はかかっても自尊心のある生き方を得ていきます。幼児教育とは、将来までその子の成長に重要な役割を果たす可能性を持っています

2021年06月14日