大人の共感

幼児期の発達は、それぞれが独立して発達するのではなく、必ず関連するものすべてが発達します。例えば一つの運動でも、それは単なる運動能力の発達ではなく、知的能力、社会性なども関連しながら発達していきます。

だから、どんな分野ものでも「やらなくてよい」ものと言うのは基本的にありません。外から判断できる子どもの興味や習熟には個人差があるので、大人が判断して「興味がなさそうだから」という理由で取り上げるのは、将来相互に関連して発達する要素をなくしてしまうことになるかもしれません。

では逆に、何でも体験の場を与えれば勝手に子どもは成長していくのでしょうか。それも違います。幼児期の子どもの好奇心は、大人との応答によって大きく育っていきます。子どもの発する「なんで?」は、自分の問いかけに向き合ってくれる、言い換えるなら共感してくれる相手に向けた信頼の言葉です。そういう相手がいなければ、「なんで?」と問うことをしなくなります。そこで子どもの興味は終わるのです。

これは大人も同じです。自分の興味や関心に応答してくれる相手がいれば、そこから更に新しい思考や発見が拡がっていきます。逆に、周りに共感や受け入れてくれる相手がいなければ、興味は広がりもしなければ深まりもしません。

子どもの育ちの原体験は信頼する大人とのやり取りにあります。共感され、受容され、応答されることが、子どもが体験してきた様々なことを子どもの中に刻み込みます。そして蓄えられた原体験がやがて新しい体験の刺激を受け、関連し合って子どもの全体的な発達につながっていきます。子どもたちにとって共感してくれる大人と、その大人への信頼はとても重要なことなのです。それは同時に、信頼する大人と一緒に過ごす時間が重要だということです。

2018年10月19日