余白をつくる

子どもに沢山の体験をさせることはとても大事なことですが、それと同時に「余白」を作ることも心に留めてほしいと思います。

「余白」とはスケジュールの「余白」です。子どもが活動や体験の間にのんびりと自分に向き合える時間という意味です。子どもの内発性や創造性を誘発するための時間的な余白ということです。子どもは幼児期に活動や体験に没頭して取り組むことが肝心です。だからこそ逆に、「何も計画されていない時間」が大事になります。そのような時間を十分に得た子は意欲的に活動に取り組む内的な力を蓄えます。

しかしこういった「余白」は、かなり自覚しないと作れないことが多いです。大人もそうですが、実は子どももスケジュールがいっぱいということはよくあります。幼稚園を降園したらすぐに習い事、次にお教室、家に帰って食事をしてお風呂に入って寝る時間。そこにある隙間時間は移動の時間ということがよくあるのです。大人のスケジュールに子どもを一緒に連れていくということもあるでしょう。だから、意識して子どものために「余白」を作る「気持ち」を持つことが大事です。それは同時に子どもと過ごす大人が子どもの「余白」を一緒に過ごすことに他なりません。

この「余白」は子どもたちの中に「楽しかった」「面白かった」という気持ちをゆっくりと浸透させる時間です。この時間が削り取られると、せっかくの体験を「やりたくない」と拒否し、主体性を失った活動にしてしまうことがあります。だから一日、一週間、一か月、一年といったスケジュールに「余白」を必ず設けるつもりでいるのが良いのです。西荻学園幼稚園は大胆な「余白」である「夏休み」「冬休み」「春休み」を持ち続けています。この期間は「預かり保育」をしません。一日の中でも、練習帳のような短時間の活動を幼稚園の主活動の「余白を埋める」ために使うということもしたくありません。自然体験のようなものを除けば、発表会のような行事は多すぎては良くありません。それらのために日常の幼稚園活動の「余白」が「余白」自体が大事な保育スケジュールの要素なのです。

子どもの育ちのために、大人である私たちには次々と「与えたいもの」、「見せたいもの」が沢山あります。しかし、何かを「しない」と決めることも与えることと同じくらい重要なのです。

2018年10月25日