習い事をやめると『やめ癖』がつくか?

子どもが習い事を始めると、一度は「やめたい」と言い出します。親としては、「せっかく始めたのだから、もう少しがんばりなさい」と励まします。しかし、「やめたい」と子どもが言ったときには、安易に励ますより、親も一旦立ち止まって考えてみるのも悪くありません。

なぜ、「やめたい」と言い出したのでしょうか。他にも習い事や教室が多すぎて子どもが疲れているのかもしれません。何事も、意欲のない時に無理にさせても成果は上がりません。それどころか「二度とやりたくない」と悪い印象として残ってしまうかもしれません。

また、子どもに習い事をやめさせると、「やめ癖」や「あきらめ癖」、「逃げ癖」がついたり、あるいは「挫折感」に苦しまないかと心配される保護者もおられます。

結論を言いますと、習い事をやめたから幼児期の子どもの発達に悪影響があるということはありません。

橋井健司先生がうまいたとえを使っておられました(「世界基準の幼稚園」光文社)。「やめたい」というのは、いわば車のブレーキを踏んでいる状態なのだそうです。そこで無理にアクセルを踏んで前に進んでも、故障の原因にしかならないでしょう。まずは親も落ち着いてなぜ子どもがブレーキをかけているのかを察知する余裕を持ってほしいと思います。

その上であえて申しますが、「やめる」という捨てるものを決める決断は、前向きな決断だと思います。「何をしないか」を決めること、「いらないもの」を見分けること、「捨てるもの」を決めることは前向きなことです。

驚かれるかもしれませんが、幼稚園と習い事や教室で一日のスケジュールがいっぱいで、子どもが疲れ切ってしまうようでしたら、いっそ幼稚園をお休みされてはいかがでしょうか。ぎっしりの隙間のない一日を無理して生きるより、よほど子どものために良いことです。私は子どもにとって隙間のないスケジュールは危険だとすら思っています。そういう子どもは、明らかに心が消耗しているのです。

その上で、子どもの体力や知力や経験を考えるとスケジュールが物足りなくなったと思われたら習い事を考え始めてもよいのではないでしょうか。

心理学用語に「レディネス(readiness)」という言葉があります。「学習活動に効果的に従事することを可能ならしめる学習者の心身の準備状態」(ブリタニカ国際大百科事典)のことを意味します。

子どもが習い事に興味をもって「これをやりたい」といっても、レディネスが整っていない中途半端な状態のこともあります。そのような状態ではじめても、長続きできず飽きてしまいます。あせって習い事を始めても成果はないのです。それでも「もう少しがんばって」と親は願われるでしょうが、そのような時は早くやめて出直した方がいいのではないでしょうか。

2018年10月29日