親はすばらしい

どんなに評判の良い教育理論であっても、すべての子を満たすことはできません。理想と現実のギャップに悩むことが必ず起こります。その子どもにあったやり方に工夫をしなければうまくいきませんし、しかもそれを忍耐強く長時間続けなければ効果は持続しません。教育はインスタント、時短というわけにはいかないのです。子育ての悩みが尽きることはありません。諦めずに自分なりの努力と工夫、そして地道な実践からしか道は開けません。

しかし、子どもを愛する大人が、教育理論を知ることで子どもの「正しい見方」や「手助けの方法」を知っているのと知らないのとでは全く大違いです。

子育ての悩みは尽きません。しかし、子どもの成長は待っていてはくれないのです。幼児期の成長に「停滞」はないのです。その時に、不器用でも不慣れでも、「子どもの見方」の入り口を知っているということは、子どもの真の望みを理解することができるということです。少なくとも、それを探ることができます。そこで「手助けの方法」を知っていれば、子どもの望みに適った手助けを工夫できるということです。

幼児教育の最大の目的は子どもの望みと一致しています。子どもは「自分でできるようになりたい」と望み成長しています。幼児教育は子どもの「自立、自律」を目的にしています。このことを知っているのと知らないのとでは雲泥の差です。子どもたちはやがて主体性をもって人生を自分で拓く力を得ていきます。そのことを見失っては目先の上手、目先の成功、目先の従順、目先の満足に心を奪われてしまいます。しかもその時満足しているのは子どもではなく、大人の方ということになりかねません。子どもの人生の主役は、子ども自身です。それを奪ってはいけません。

子どもの成長は停滞しません。しかし時短にもできません。一歩一歩です。挨拶ができない時期があるでしょう。上手にお話しできない時があるでしょう。イヤイヤと何でも嫌がる時があるでしょう。ケンカしてしまう時があるでしょう。しかもそれが続くと、「いつになったらできるようになるのか」、と、ため息が出て、途方に暮れることでしょう。

それでもその時に子どもの望みを忘れずに「良い母親であろう」、「良い父親であろう」と悩む人は、「良いお母さん」であり「良いお父さん」です。子どものために悩み、頑張っている親は、間違いなくかけがえのないすばらしい親です。

理想と現実のギャップに悩むときには、どうか「自分でできるようになりたい」という子どもの願いを思い出してください。周りの声も批判や非難よりも、その子の内なる「できるようになりたい」という声に心を向けるお母さん、お父さんでいてください。幼稚園はそんなお母さん、お父さんの味方です。

2018年11月28日