母親の笑顔は家庭の太陽

北欧諸国は「子育てしやすい国」のランキングで常に上位になります。その要因は政府の子育て支援が理由ではありません。そう世間に思わせると経済的効果と得票が見込めるので、日本ではそのように理解させようとする方々がいますが、実際の要因は「父親(同居家族)の育児参加」の「質」が良いということです。

ただし、この場合も単純に父親の育児休暇を取る割合で「質」を計ると本質を見失います。確かに育児休暇を取るスウェーデンでは父親は80%に上るので、日本の2%と比較すれば驚異の数字です。ただそれ以上に重要なのが、育児に参加する父親(同居家族)が何を目的としているかです。それは母親に代わって育児を「実行する」ことが目的ではないのです。

乳幼児期の子どもと密接にかかわるのは母親です。これは子ども自身が母親を求めるからです。この時期の母子関係によって子どもの人格形成の土台が作られていきます。そこで、父親(同居家族)が目的とするのは、子どもにとって代わりのいない「母親のストレス負担を軽減する」ことです。言い換えると、母親をいかに「人、妻、母として幸せ」にするかが目的なのです。それは必ずしも何でも代わってやってあげるということではありません。

これは子どもの育ちの面で極めて大きな影響をもつ姿勢です。繰り返しますが、この時期に子ども自身が密接なかかわりを求めるのは母親です(母性と言い換えていいいかもしれませんがここでは母親とします)。これはどうしようもなく代替不可能な子どもの本能的な求めです。

母親の心の余裕が子どもの人格育てます。しかし母親が育児のストレスでイライラしており、眉間にしわを寄せていては、愛情を求める子どもに欲求不満を残します。「ああしなさい!」、「それはダメ!」、「早くしなさい!」、「ちゃんとしなさい!」、「後にして!」、「わがままいわないで!」、「どうしてできないの!」、「何度言ったらわかるの」といった禁止の言葉や急き立てる言葉、否定の言葉、やがては子どもの人格やプライドを傷つける言葉が増えます。それらの言葉が子どもの体験をことごとく「失敗体験」にしてしまいます。これでは自尊心は育ちようがありません。しかし、これは母親の責任ではありません。父親をはじめとする同居家族が母親を「幸せ」にしていないからこうなるのです。

母親の笑顔は家庭の太陽です。父親や同居家族の育児サポートはこの太陽を守るためにあるのです。それが家事や雑用を手伝うことであるか、幼稚園の送り迎えをすることか、子どもの勉強を見てあげることか、母親の話をきちんと聞くことか、夫婦で子どもの将来を語り合うことか、一日完全に子どもから離れて自由な時間をもてるようにするとか、その「実行」は様々でいいのです。そのために感謝と配慮と協力をすることが父親(同居家族)の育児参加です。目的は幸せなってもらうことです。

2018年12月11日