イヤイヤ期を考える

「もう帰りますよ」-「イヤ、帰りたくない」、「お泊りする?」-「イヤ、帰る」、「お片付けしましょう」-「イヤ、もっと遊びたい」、「おもちゃがなくなってしまうかもしれないけど、いいの?」-「イヤ、片づける」、「それじゃあ一緒に片づけましょう」-「イヤ、もっと遊びたい。」以下、同じようなやり取りが続きます。何を促しても「イヤ」と返すので、「イヤイヤ期」などと呼ばれる状態です。親もどう対応していいのかわからなくなり途方に暮れてしまいます。

この「イヤイヤ期」を通過するために大切とされているのが、以前ブログで触れたことのある「根拠のない自信」です。「根拠のない自信」というのは、「自分は愛されている」「自分は受け入れられている」「自分は大切にされている」という感覚であり、「自分は価値ある人間だ」と子どもが自分の存在を信じている状態です。この「根拠のない自信」はまず100%親から与えられます。子どもが努力して手に入れるものではありません。

「根拠のない自信」の上に様々な学習や経験が積まれていきます。底辺である「根拠のない自信」が大きく広ければ、その上に築かれるものも安定して大きく高くなります。ピラミッドをイメージされると良いでしょう。

そこで話しを「イヤイヤ期」に戻しますが、「根拠のない自信」を十分に得た子ほど、次に「自分の力で、何でもやってみたい」という好奇心旺盛な時期を迎えます。「根拠のない自信」があるから「何でもやってみたい」と思えるのです。そうして大人の側からすると、「何でこの子は私を困らせることばかり始めるの!」と思わずにおれない行動が出てきます。「やってはいけないこと」をします。

子どもには「何でもやってみたい」という気持ちがあり、大人の方には子どもの行動をコントロールしなければならないという思いがあって、この相反する思いがぶつかるところで「イヤイヤ期」が起こるのです。

「何でもやってみたい」という子どもの思いは、言い換えると「自分自身と自分の周りの環境を自分でコントロールしたい」ということです。だから何であれ自分以外の者に自分の行動をコントロールされることが嫌だから「イヤ」と言っているのです。この時に「もう知りません」と突き放されると「愛されている自信」が揺らいでしまいます。ではどうすればいいのでしょうか。前もって言っておきますと決して楽ではありません。

まず基本的に、納得のできる理由をきちんと言葉を尽くして教えることです。やさしく丁寧に説明して、なぜその行動をしなければならないのかを考えさせることで、子どもが少しずつ受け入れ理解できるようにします。そうして「根拠のない自信」を損なわないようにします。

しかし、そううまくいかないことがあります。それは、「イヤイヤ期」は「自分でやりたい」という自立心と、親から離れることの不安との葛藤を抱えている時期のためです。この葛藤を子どもに言葉で説明して理解させ受け入れさせろという訳にはいきません。

「イヤイヤ期」は、人の一生の中で最も「自立心」が強くなっている時期だという意見があります。しかし、同時に「根拠のない自信」を与えてくれる親から離れる不安が最も大きい時期でもあります。この二つの気持ちがぶつかって「イヤ」へと突き進む他ないのです。

このどうにもならない子どもの心情を理解することが大事です。「イヤ」が続くようでしたら、「わかった。うるさくいってごめんね」と受け入れ、そのことをスキンシップも合わせて子どもに感じさせてあげると良いでしょう。親の愛情によって「根拠のない自信」をさらに大きく厚く与えてあげるのです。その繰り返しが、「イヤ」以外の行動へ子どもを進ませることになります。

最後にもう一度記します。この時期の当事者となる親は楽ではありません。肉体的に休息をとって、体と心に余裕を持つよう心掛けてください。親が幸せを感じられることが、どんな時期でも子どもの健やかな成長と幸せに必ずつながります。この時期は特に親自身も自分を労わることを意識すると良いと私は思います。

2018年12月21日