質問の力

「質問」は教育活動の中核となるツールです。質問によって、子どもの「知りたい」を引き出し、刺激し、子ども自身が考え、答えを探し求め、答えを見つけることを経験させることが教育の本道です。この質問という素晴らしいツールを使いこなすという点で私自身は自分をまだまだ二流以下の教育者と思っています。常に反省することが多いです。イエス・ノーの二択を超えた質問を「最適に」発し、子どもに与えてこそ一流の教育者です。

例えば先日のブログ、「家庭でルールを考えてみましょう」におけるルール作りの時に、子どもに良い質問を重ねて子ども自身が答えに自分で近づけるように導くことで、子どもは自分で決断します。自分で決断したからこそ実践もともないます。ルールの効果が高くなります。基本的に、自分で答えを出すことが重要なことです。

良い質問を与えられることで、子どもに自分で考え、自分で答えを探す癖をつけることが大切です。良い質問を多く受けてきた子は、自問自答も育っていきますから、問題解決能力が育っていきます。

代表的な良い質問のカテゴリーは次の二つになります。

① どんなやり方があると思う?

② 自分だったら、どうすると思う?

シチュエーションによって質問の具体性は代わりますが、およそこの二つの代表的な質問を念頭に置いて質問を構成します。お分かりになるとおもいますが、この二つの質問に共通するのは、問題の当事者が質問を受ける子ども自身であることを意識させる性質の質問となっていることです。

幼児期に第三者の考えや感情を想像して物事を考えさせるというのは難しい課題です。様々な意見がありますが、人間が明確に第三者の目線に立ち自分を客観視できるのは12歳以上と言われます。大人になっても十分にはできないという分析をする学者もいます。「私が~と感じたのだから、〇〇ちゃんも~と感じる」という展開はできるのですが、「私は~と思っている。○○ちゃんは△△の理由で◇◇と思っている」という想定へと発展させることが難しいのです。第三者に関わる質問をしてはいけないということはありませんが、子どもが答えることができない様子でしたら、問題を子ども自身にもう一度戻して構成しなおす方が建設的です。発展的、建設的な質問の基本は自分自身の問題として課題を受け止められるように導くことを意識した質問になります。

子どもから質問への答えが返ってきたら、まず「なるほどね」、「そうなんだね」、「うんうん」と答えを受け入れます。それから、「どうしてそう思ったの?」と子どもの思考を辿る質問をして対話を広げていきます。

何らかの知識を求めているのであれば、どうやってその知識を得るかを対話によって考えさえ、一緒にその答えを確認するようにするとよいと思います。いくら子どもが自分で考えることが大事と言っても、間違った知識を与えてしまうのはよろしくないでしょう。協力して答えを見つけて「そうだったんだ」と納得できれば良いわけです。その中で、図鑑の見方などを身に着けていくこともできるでしょう。

質問は答える側が試されるだけでなく、質問する側の知識や知力の「底」を晒すことでもあります。初めから最上の質問はできません。しかし自分の質問を常に批判的に反省することで、良い質問者として質問の蓄えを増やすことはできます。つまらない質問や、的外れな質問は子どもからも軽蔑されます。大人同士では人間関係に致命的な事態を招くかもしれませんが、子どもは私たちとの関係をその程度で断ち切ることはしません。実に心の広い、ありがたい、最上のコーチです。しっかりと今日も子どもたちに話しかけて、鍛えてもらおうと思います。

2019年02月06日