子どもを待たせる

子どもが小さい時の子育ては面倒で、手間のかかるものです。子どもは親に負担を強いるのです。しかし、永遠の子ども時代などありません。幼い時は人生全体の僅かな期間のであり、通過点に過ぎません。ここでしっかりと子どもと時と場所を共有し、負担を背負い手をかければ、後の長い期間の子どもとのかかわりが楽になります。しかし、大きくなってから軌道修正するのは大変なことです。

おそらくどんな育児書を開いても、成長期の子どもにとって最重要なのは親によって子どもが尊重されることです。それも体験的に、です。子どもの話を聞き、問題を子どもと一緒に考え、話し合う時間を持つことです。ここで徹底的に親に辛抱や我慢強さが求められます。

「これやって!」、「一緒に遊んで!」、「早くこっち来て!」…子どもと接していると、実に多くの要求をしてきます。こちらの都合などお構いなしです。どんなに我慢強い人でも、忙しい時に子どもからこのように言われるとイライラすることだってあるでしょう。

こういう時は、自分に対しても子どもに対しても鷹揚に構えることです。子ども要求が緊急のものでない限り、別の仕事をしている最中であれば「今、お掃除してるから待っててね。お掃除をしない汚いお部屋で遊ぶのは、お母さんは悲しいと思ってるの」でいいのです。

乳児期の子どもの要求には速やかに応答する必要があることが多いのですが、幼児期の子どもの要求は、きちんと丁寧に理由を伝えることで待たせることができます。そして、この説明をするときのコツが、「嬉しい」、「悲しい」といった感情を伝える言葉です。

子どもは自分勝手で自分を優先すると思われることが多いのですが、子ども自身と親のどちらを優先するかを選ばせると、子どもは意外なほど多くの場合親を優先します。もちろん泣いたり、駄々をこねたりして冷静に選ぶことができない場面もあります。そのような時は、こちらの言葉を聞きとれない状態ですし、選択できない状況です。しかし選べるならば、子どもは自分よりも親を守る方を優先することが多いのです。

禁止すべきことについても、感情を添えた説明をすると子どもは禁止の理由と危険を認識しやすくなります。頭ごなしに理由も説明されずに「ダメ!」と言われては腹が立つものです。おそらくこれは自分の存在が認められていないと感じてしまうことからくる反発です。ですから、子どもの存在を受け入れていることを伝えることが理由を説明するときの第一段階。第二段階に論理的説明をし、第3段階としてこちらの感情を添えて伝える。さらに可能ならば「~が終わったらね」と約束をすることで、見通しを与えることができます。普段の関係が特別険悪でない限り、基本的にはこの伝え方で幼児期の子も待つことや禁止を受け入れることができるようになります。一度言えば理解するとは限りません。何度も同じようなやり取りを繰り返すこともあるでしょう。しかし確実に理解できるようになります。やがて自分が他者に与える影響について予想できるようになります。

2019年02月07日