「褒める」と「おだてる」は違います

大人は子どもを褒めるのが好きです。「すごいね!」、「上手だね!」、「天才!」と大げさに褒めたくなります。
ただし、子どもが夢中になっている時に褒めるのは、子どもにとって集中を妨げる邪魔になってしまうことは以前記しました。もう一つ、子どもを褒めるときに心したいのは、「大げさにやり過ぎない」ということです。
褒められることは子どもにとってうれしいことです。しかし、大げさに褒められると、その後の遊びへの集中力が削がれてしまいます。
幼稚園で子どもたちは鉄棒で遊びます。「ぶたのまるやき」、「前回り」、「逆上がり」等、褒めてもらいたくて「見て!」と先生を呼びます。見せてもらった先生も「できるようになったんだね」、「いっぱい練習したものね」と先生たちも褒めます。しかしその時に思わず「大げさに褒めて」しまうことがあります。大げさに褒められた子はうれしいですから、続けて鉄棒に挑戦します。しかし、褒められた後の挑戦が、一番怪我をしやすいのです。なぜなら、鉄棒を成功させることよりも、「もっと褒めてほしい」ことに心が向いてしまい、集中できなくなるからです。そして、痛い目を見たことに挑戦するのは、心が折れてしまってできなくなります。
子どもたちが「見て」といって誘ってくれるものは、子どもにとって「ついにできた」という自慢の技です。鼻歌交じりにできることではなくて、集中して力を発揮してようやく成功したものです。それを今後繰り返してより上手にできるようになります。その時に「褒められたいからやる」というのは邪魔な意識です。子どもにとって自分から欲して、「やりたいからやる」という経験こそがもっとも重要な育ちの機会です。
褒めるというのは、おだてることとは決定的に違います。芸を成功させたイルカにご褒美をやるのとは全く違うことです。大人が子どもを褒めるというのは、「できた」という達成感そのものを喜びとして感じられるようにするためのものです。ですから、褒めるというのは子どもを興奮させるために伝えるのではなく、短い言葉で、達成を次の挑戦のための基礎とするように安心させることを意識する方が大事なのです。

2019年07月23日