子どもなりの覚悟

幼稚園は間もなく来年度の入園を希望される方々の面接の時期を迎えようとしています。同じく、来年度から小学生になる園児たちも、受験、入学前検診など、いよいよ小学校に行く日が近づくことを感じるようになります。
この時期、運動会という大きな行事を達成した自信で日々の遊びがグッと力強く大胆になる子がいる一方で、お友だちから離れて教師を強く求めるようになる子や指しゃぶりなどの行動が再び始まる子がいます。夏休み後に少なくなった抱っこやおんぶ、肩車などの要求も増えました。
運動会で見た子どもたちの成長に大人はさらに大きく、さらに前進を期待します。それが「もう、おにいさん、おねえさんなんだからできるでしょ」、「おにいさん、おねえさんなんだからしっかりしなさい」といった指示となって子どもたちに届くことがあります。
子どもたち自身も成長していくことを望んでいます。しかし、小学校を控えた頃の子どもの成長は不安と隣り合わせです。子どもたちは不安を抱っこやおんぶ、肩車などの接触を教師を求めたり、自分の指をしゃぶるといった行動で乗り切ろうとしています。
成長の著しい幼児期は、成長というものの持つ「これまでの当たり前が壊され、新しい常識が獲得される」という側面が特に強い時期なのだと思います。この成長の中を前進する子どもたちの感性は、自信と不安の中で不安定になるのも仕方のないことです。
小学校を控えている頃の子どもたちには、自分自身が甘えていることも、頑張らなければならないことも十分に分かっています。その中で、覚悟を決めて前進するために安心できる感触を求めるのです。このときに、子どもたちの具体的な将来を、「楽しみだね」と声をかけて一緒に期待を膨らませることがサポートになります。この時期の子どもの甘えは特に大事に受け止めてほしいと思います。簡単にそれを止めないで欲しいと思います。
甘えん坊で、頼りなく、幼くて心配になってしまうかもしれませんが、子どもたちは新しい成長に対して、彼らなりの感性で覚悟をきめ、意識することがあるのです。
小学校に入ってすぐの授業公開に行きますと、クラスの中で幾人かの子が指しゃぶりをしたり、口を手で触ったりしている様子を見ることができます。子どもなりに真剣に新しい環境に向かい合っているのです。そう思うと、指しゃぶりも、抱っこやおんぶを求めるのも、尊い挑戦の儀式なのです。

2019年10月29日