子どものこだわりを理解するヒント

幼児期の子どもは、時として大人には理解しがたいほどの「こだわり」をみせることがあります。それらはやがて必ず環境に適応することで収まりますが、その間に子どもの内でどんなことが起こっているのでしょうか。

幼児期の子どもにとって、まだまだ世界は初めてのことに満ちています。目に映ること、耳にすることが未知のものばかりです。この時の子どもの置かれている状況を理解するには、今まで一度も行ったことのない世界に放り出されたと想像してみてください。

手がかりが何もないのです。地図もなく、言葉もわからず、時計もない。そんな「知らない世界」に放り出されたら、私たちはどうするでしょうか。必死に周りを観察し、僅かでも手がかりとなることを見つけたら、それを目印にして動こうとするでしょう。探検に出かけても、必ず見知っている目印を手掛かりにして戻って来ようとするでしょう。そうやって自分で地図を描き、自分で言葉を理解し、そこにいる者たちと手探りでかかわっていくのです。それが、幼児期の子どもたちの毎日なのだと考えてください。

もちろん「ガイド」として大人が傍にいることは大きな助けになるでしょう。しかし、このガイドは同時に「わからないこと」が待ち構えている世界に子どもを押し出すのです。知らない世界を進んでいくのは不安なことです。そこで、目印となることを一つ一つ繋げて秩序立てていきます。それは安心を作る作業です。

ここで、もう一つ想像してみてください。そうやって苦労して秩序立ててようやく適応しようとしている環境を、そうとは知らない誰かに壊されてしまったら、つまり目印となるものを取られたり、別の位置に動かされてしまったら、不安からパニックになり、癇癪を起こしても当然な気がしませんか。

幼児期の子どもは、物事を行う順序がいつもと違うと癇癪を起し、いつもの場所にものが置かれていないと怒ったり、物をきっちり同じ向きで揃えないと落ち着かなかったりします。大人にとっては、なぜそんなことが気になるのかと思うような些細なことにこだわります。しかし、上記のように子どもとってはそれが一大事なのです。

子どもこだわりに全て付き合っていられないというのが、大人の正直な気持ちでしょうが、この幼児期の子どもの気持ちを理解しているのといないのとでは大違いです。

こだわりはそう長くは続かないと言われますが、1年以上様々なこだわりを見せるのが普通です。この時期はイライラすることでしょうが、この時期にこだわりを通して「秩序感」を育てることが、人間の社会性を得ていくために大切な準備なのです。

2018年11月02日