サポートのさじ加減

集中して取り組んでいる子どもをそっとしておくことは大切ですが、同時にうまくいかなくて困っている部分があったら、適切なサポートをすることが必要になります。
物事をやるにはいくつかのステップがあります。例えば折り紙を折る時に、折工程が10あるとします。折り順にそって6までは自分でできるけれども、7がうまくできなくて集中力が途切れることがあります。その7「だけ」を教えることがサポートになります。7を教わったらまた自分で完成させたいのに、結構大人は7だけでなく最後の10まで「やってあげて」しまいます。大人が仕上げて「できた!」と喜んでも、子どもにとってはうれしくありません。
作ってもらった素晴らしい折り紙よりも、大人から見たらまだまだ下手くそでも最後まで子ども自身が完成させた折り紙の方が子どもにとってはるかに価値があります。サポートはお世話をすることとは違います。
もう少し加えますと、「やり方」を教えるときには、できるだけ「言葉を使わない」で伝える方が良いです。言葉は子どもにとって使い始めたばかりの思考ツールです。言葉と動きと両方で教えられると、言葉の方に意識がいきます。しかし、幼児期の取り組みの多くは「できる」大人の真似をすることで体得します。字を書き始めた子どもが文字をひっくり返した「鏡文字」を書くのも、真似をするからです。鏡文字は書こうとすると難しいのに、子どもは器用に鏡文字を書きます。それぐらい、動きを真似ることが得意な時期なのです。動きを真似るときの集中力は、言葉を理解しようとするときの集中力と比べ物になりません。子どもに説明している自分の言葉を分析すると分かるのですが、動きを教えようとする言葉は難しすぎる単語になるか、抽象的すぎるものになっています。そこで、「見ていて」と指示して、ゆっくり、ていねいに、黙ってやるほうが効果的ということになります。
上記の折り紙であれば、出来ないで困っている折り方だけを黙って見せて、子どもにまた折り紙を返してしまうというのが、良いさじ加減のサポートです。

2019年05月22日